「パリ・オペラ座のすべて」
La Danse, Le Ballet de L'Opera de Paris
監督:フレデリック・ワイズマン
製作国:2009年フランス・アメリカ合作映画
上映時間:2時間40分
今日は、アメリカ人がフランスを舞台に撮った映画を二本続けてみることに。ドキュメンタリーとフィクション、ベテランと若手、といった大きな違いはあれど、なんの共通点もない映画というのも、実はそうあるものではないのではないだろうか。どっちも、2時間半超の長尺だし。
これは、バレエの大ファンでもあるというドキュメンタリー映画の巨匠とされるフレデリック・ワイズマンが撮ったパリ・オペラ座のドキュメンタリー。何の余計な解説や説明もないし、見ていると、自分がここに放り出されているような気分になってくる。バレエの練習やリハーサルだけではなく、マネージメントなどの舞台裏、食堂、掃除、屋上での養蜂、地下の水路、舞台裏の照明、本当にオペラ座の全てなのだ。ワイズマンの映画はこの前の特集で数本見たけれど、病院でも何でもそんな感じだ。
普通ドキュメンタリーを作るなら、有名なダンサーとか面白い人とか、何かのイベントとか出来事とか、そういうフォーカスがあると思うのだけれど、そういうヒエラルキーやトピックスを作らない。そこにいて、そこで時間を過ごし、そこで見ること、そこで生活することという体験を、そのまま映画にしている、と言いたいという誘惑に駆られるが、そんなこと、早々簡単にできる訳がない。長い時間、そこでまず時間を過ごし、現場に溶け込むところから始めるらしいけれど、まさに、さもありなん。撮影をすることが、その場の日常の一部になると言うところから、始まっているんだろう。写されている人たちが誰もカメラを気にしているように見えない。というのは、この人は一体どういう人なんだろう。透明人間みたいな人なんだろうか。どんな人なのか、見てみたいものだ。
そんな訳で、バレエなんて見たことないし、興味もないんだけど、これを見ていると、このパリ・オペラ座の舞台裏の空気だけはすごく伝わってくるんですね。リハーサルでダンサーと振り付け師がどれだけ一つ一つの動きに注意を払い、一つの舞台を作り上げているか。ダンサーがどんな気持ちで踊っているか。そして、ステージの外でも、年金改革のうごきとか、配役とか、自分のステータスとか、劇場の後援者へのサービスとか、いろんなことがある。そんなあれやこれや全てが、劇場では起こっている。そして、そこでは食事もするし、日常ふと見る劇場の風景とか、そういう色々なもの。その全てがステージの後ろにはあって、それが劇場という場所を作っている。それがあって、ステージが出来ている。その全体像を経験できてしまうというのが、ワイズマンの面白さだと思う。
しかし、パリの屋上からの眺めって、ヌーベルヴァーグの頃からも全然変わらないなあ。中心部の建物は高さも揃っているし、都市計画もきっちりしているから遠くまで見晴らせるし。20年ぶりに行ってみたいなあ。
オペラ・バスティーユ - Wikipedia