「白い馬」、「赤い風船」:監督 アルベール・ラモリス

白い馬(1952) CRIN BLANC: LE CHEVAL SAUVAGE
40分、フランス
監督:アルベール・ラモリス
脚本:アルベール・ラモリス
撮影:エドモン・セシャン
音楽:モーリス・ルルー
出演:アラン・エムリイ、パスカル・ラモリス

赤い風船(1956) LE BALLON ROUGE、THE RED BALLOON
35分、フランス
監督:アルベール・ラモリス
脚本:アルベール・ラモリス
撮影:エドモン・セシャン
音楽:モーリス・ルルー
出演:パスカル・ラモリス、シュザンヌ・クルーティエ


 長い間、名前だけ知っていた映画と映画監督。やっと見ることができたけど、感動。権利関係の問題で長いこと見ることができなかったそうだけど、こういう映画がそういう憂き目にあうというのは、余りに悲しい話のように思える。実際のところ何があったのか、知りたいとも思わないのだが。
 どちらも短い映画だし、粗筋を書くなら、「少年と白い馬が友達になる話」、「少年と赤い風船が友達になる話」、こう書けば十分だろう。何故なら、この映画には、少年とは何か、白い馬とは何か、赤い風船とは何か、そして、友達とは何か、その全てがここにあるのだから。勿論、その答とは言葉ではない。言葉にすることで失われてしまう、もしくは、違う何かになってしまうような何か。その何かが弾けてしまわぬようにと、言葉少なに展開される映画。それは子供の遊びのルールのようだ。
 ただ、忘れぬよう書き留めておけばよい。
 波打ち際を走る白馬の美しさ。南フランスの湿地帯や砂地などの変化に富んだ自然。うさぎを追いかける少年と白い馬の楽しさ(うさぎ丸焼きにしちゃいますが)。馬同士の喧嘩の面白さ。少年の長い前髪と白い馬の鬣。
 赤い風船のレトロな赤色と、あの大きさ。モンマルトルの入り組んでいて、起伏が多い路地。あの風船の素晴らしい動き。最後の風船が次々と集まってくるシーン。
 それにしても、「白い馬」の少年が馬に引きずられるシーンとか火の中から馬を助け出すシーンとか、最後の海に消えていくシーンとか、これはあのまんま撮ったんだろうか。今じゃ、いくら何でもあんな危ないシーン、子供にやらせることは出来ないだろう。「赤い風船」の最後のシーンはさすがに人形だろうけど。大体、今じゃ、最初の風船を取るところだって親から文句が付きそうだ。ピアノ線を使って風船は動かしてるんだろうか。それにしては、あのふわふわしていながらも自在な動き、随分工夫しているに違いない。どうやっているのか分からないけれど。
 いまなら、CGを使って五輪開会式の花火まで作ってしまうらしいけど、生きた人間が生身ですることでしかできないことというのはなくならないと思う。精神論ではなくて、映画の中の動きというのはそういうものだ。魂が宿るということはあるのだ。