「篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝」: 竹熊 健太郎

篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)

篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)

 控えめに言って、これより面白い本を今年3冊以上読むことは有り得ないだろう。抱腹絶倒、驚天動地。
 これは「サルマン」などでも知られる竹熊 健太郎が戦後のサブカルチャーに深く関わってきた4人の方へのインタビュー集なのだが、とんでもないご老人ばかりなのだ。康芳夫(マルチプロデューサー)、石原豪人(挿絵画家)、川内康範月光仮面原作者)、糸井貫二(前衛芸術家)。「たけくまブログ」で川内康範先生については、知っていたが、他のお三方については始めてこの本で知った。
 康芳夫氏は、「アントニオ猪木対モハメッド・アリ」、「オリバー君」などのイベントの仕掛け人。石原豪人氏は往時の少年マガジンの巻頭イラストから「さぶ」などのホモ雑誌、SM雑誌のイラストまでを手掛けてきた挿絵画家。川内康範氏は、月光仮面レインボーマンなどの原作者のみならず森真一の「おふくろさん」などの歌謡曲の作詞家でもありアジア各地での第二次大戦の日本兵の遺骨収集を通じて得た人脈から政界のブレーンでもある。糸井貫二氏は、ハプニング・アートとして読売アンデパンの時代から、突然の裸でのパフォーマンスを各地で繰り広げてきた。いずれも、すでに高齢の方であり、石原氏はすでに鬼籍に入られた。
 どの方にも共通するのは、戦争体験を通じてのものだろうが、人間腹をくくれば怖いものなど何もない、という肝の坐り方が尋常ではないということだ。そして、どの方も頭がおかしい訳では毛頭なく、常識人よりも常識に通じ、その上で腹を括ってこういう生き方をされてきた人々なのだ。話が面白くないわけがない。体験を通じて体得されてきた哲学というのは、すごいものだ。
 この方々に対する竹熊氏の姿勢というのが、やはり良い。いかれっぷりに心酔しているという感じで、トンデモぶりを面白がりながらも、もうこの人たちに憧れてしまっている。だから、このインタビューが成立したのだと思う。このイトカン氏のインタビューがあって、「サルマン」のあの全裸パフォーマンスが出てきたのだろうか。
 本当に一気読みしたなあ、久しぶりに。