「野戰軍樂隊」”生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)”@東京国立近代美術館フィルムセンター

67分・35mm・白黒
敗戦色濃くなるなか、情報局募集による「国民映画脚本」をマキノが脚色。戦意高揚映画ながら音楽映画としても楽しめる。軍楽少尉・園田(佐分利)が野戦軍楽隊を組織するために、中国駐屯のある部隊を訓練することになるが、音大出の菅上等兵(上原)と佐久間上等兵(佐野)はことごとく衝突する…。歌自慢の中国娘を演じた李香蘭は本作を最後に満映を退社。

'44(松竹)(原)田辺新四郎(撮)竹野治夫(出)小杉勇佐分利信、三原純、上原謙佐野周二李香蘭杉狂児、三井秀夫、槇芙佐子

上映会情報生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)
 やっとマキノ特集1本目。軍隊の馬のトレーラーが、もう西部劇。李香蘭の歌うシーンのクレーンなんか感動もの。歌だけでセリフもないけど、スターだから、もう強引にしっかり見せ場にする。この辺の豪腕も楽しい。それを成り立たせてしまう李香蘭もスターだなあ。
 軍楽隊の演奏シーンの影の使い方とか、前線の移動のシーンとか、満州というのは、当時の映画人にとっても新天地だったわけで、敗色濃い中で、苦しい状況でも映画作るのは楽しかったんだろうなあ。俺も西部劇が作れる!満州で撮った映画って、そういう気持ちが伝わってくるんだよな。
 クラリネットで赤ん坊が泣きやんで「これが音楽の力だ」と言われて佐久間上等兵が感動して頑張りだしちゃうとことか、軍楽少尉が「佐久間上等兵、二歩前へ、独奏」なんて言うところとか、実に、実に、マキノ節だなあ。「未経験者と経験者のペア、お前達は夫婦だ!」なんて、もうホモソーシャルそのもの。
 いかにも戦時中の映画で、敵は米英、中国の皆さん、仲よくしましょうと、最前線で爆撃の雨の中で満州ローズみたいな女性がアナウンスするバックで演奏するところなんか唖然。情報局の国威発揚映画というのはこういうものだったのか。