『あなたの体も危ない!―糖尿病1600万人を救う魔法の杖』: アントニオ猪木, 舘 一男

あなたの体も危ない!―糖尿病1600万人を救う魔法の杖

あなたの体も危ない!―糖尿病1600万人を救う魔法の杖

 読了。別に自分が糖尿病の心配があるといわれているわけではないのだけれど、半ば仕事絡みで読んでみたけど、結構おもしろかった。アントニオ猪木は38歳くらいから糖尿病で20年間くらい苦しんでいたとは知らなかった。とにかく自己流で20年間も合併症も起こさずに戦い抜いた挙げ句、この八重洲クリニックの先生の門を叩く。この先生の治療への姿勢は独特で、患者を名医にすることが治療の目的なのだという。インスリンをきちんと必要に応じて必要なだけ患者が自分で血糖値をモニターして自分で投与できるようにカウンセリングして指導するのだそうだ。血糖値を上げるのは炭水化物なので、ステーキを食べてもパンを食べなければ大丈夫だという。食事の内容に応じて患者が自分でインスリンの投与量を判断出来るように指導するんだそうだ。
 自分で自分の健康状態をモニタリングしてコントロールする、という考え方は、『いつまでもデブだと思うなよ』と通じるところがある。セカンドオピニオンという考え方だってそうだし、専門家としての医師の怪しさにみんな気がついている。インターネットや様々な情報で、そういう実体が分かってくると、患者が自分で自分を管理する、治療する、ということになる。専門家だけが知識と経験と情報を独占できた時代ならともかく、インターネット以降はこうした専門家と一般人の間のヒエラルキーや持っている情報の非対称性みたいなものが崩れ出す可能性があるんだと思う。
 今の医学では、予防に関してはそれほど科学的で明快な因果関係を示し、治療することが出来るところまで行っていないのだと思う。そもそも、余りに人間の体は複雑すぎるシステムなのだ。対処療法的な医学では、病気の患者を治療することが出来ても、病気でない人を病気にならないようにすることが出来るわけではない。
 色々と考えるきっかけになっておもしろかった。