「海神記[下]」 (光文社コミック叢書〈SIGNAL〉: 諸星 大二郎

海神記[下] (光文社コミック叢書〈SIGNAL〉 (0007))

海神記[下] (光文社コミック叢書〈SIGNAL〉 (0007))

 読了。まだ、これは第二章で続きはまだ書かれていないようだ。最後に天照大神(難しい言い方で、著者のあとがきを読んでそういう意味なんだとやっとわかったorz)というのが出てきて、ああ、これは結局大和朝廷の成立までを描こうとしているのか、とやっとわかってきた(情けない)。つまり、古代の神話と歴史の境目を描こうというとてつもなく野心的な試みなのだ。それがわかってきたところで、下巻終了。
 超自然的な化け物も出てこないし、地味といえば地味なんだけど、ここで未完になるのはあまりに惜しい。でも、これはちゃんとしたわかりやすい解説が必要だ。タネをなかばばらすことになっちゃうけど、マンガ読んで、解説読んで、もう一回マンガを読まないと。めんどくさいけど、そのくらいの価値はあると思う。誰か、古代史とか民族学とか考古学の顕学がこの面白さを語ってくれないものだろうか。
 とはいっても、そういう難しい話抜きでも面白いんだけど。あとがきで著者自身が「神とは世界を語る言葉にほかならない」と言っている。それは、まさに下巻のクライマックスの巫女の神がかりのシーンのことで、ここで巫女は神を語っているが、それが部族間の同盟の理由付けそのもので、政治が「まつりごと」であった時代というのは、まさにこんな感じだったのか?と、このスケールの大きな想像力に圧倒される思いがする。