「生きさせろ! 難民化する若者たち」: 雨宮 処凛

生きさせろ! 難民化する若者たち

生きさせろ! 難民化する若者たち

 読了。「オール・ニート・ニッポン」と大体同じような人やテーマが出てくるけど、あちらは柔らかいライブ盤で、こちらはがっちり取材をまとめた力作。見た目はまじめに見える新書の方が中身は柔らかくて、マンガが表紙(スピリッツの「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の花沢何とか氏)の単行本の方が全然固い作り。
 最近の大卒新卒のうち、正社員として就職できるのは6割程度って、。。。いくらなんでも7,8割は位に思っていたけど、いつの間に日本はこんなになってしまったんだ(というのは、96年ごろの経団連の活動や法律改正かららしい)?ひどい、ひどい、とはいっても、ここまでひどいことになっていたとは正直知らなかった。
 しかも、正社員にされると、本当にぼろぼろになるまでこき使われるという実体が、またむごい。著者の弟さんがヤマダ電気に就職してフロア長になったら、本当に朝の8時から夜中の3時、4時までこき使われて過労死しそうになった話もぞっとした。
 ヤマダ電気もそうだけど、恐ろしいのは、ここに出てくる企業って、業績が非常に良い企業ばかりだということだ。キャノンにしても、松下にしても、ヤマダ電気にしても。ついにキャノンの御手洗氏も国会に承認喚問されて、偽装請負について問いただされるようだけれど、経団連の会長がこういうことやっているというのは、あんまりだと思う。
 もはや、日本企業の技術的優位性なんて、ほとんどエレクトロニクス業界じゃ存在しなくなっていて、自動車業界みたいにオペレーション優位性の勝負になっていくんだろうな。そうなると、コストの高い日本でものを作るなんてどんどん無理になってきている、というのも、巷でさんざん言われていることだ。それでも、日本でものを作ろうとすると、大企業は実質的に法律違反を行っている人材派遣業者に泥をかぶせて人件費を抑制して利益を出そうとすることになる。それで市場最高利益だ、などといってどうするんだ?ということになるんだけど、これだけ海外の資本が日本株買いを行ってきていると、彼らは高い利益率を求めてくる。パフォーマンスが低ければ、容赦なく株を売られて、株価は下がり、経営は苦しくなる。まあ、経営者が過労死したなんて話は聞かないし、それ相当の報酬は得ているわけだから、請負偽装の責任が許されるとは思わないが、そういう方向に流れるのが不思議ではないような情勢になっている。給料上げられないなら、もう、いっそ、それで十分生活できるような物価の低い国へ行って暮らすしかないのではないか。製造業は、工場も人も中国に移るとか。ここまでグローバル化してしまうと、流れは止まらないだろうし。