"Twelve" Patti Smith

トゥウェルヴ

トゥウェルヴ

1. Are You Experienced? (Jimi Hendrix)
2. Everybody Wants To Rule The World (Tears For Fears)
3. Helpless (Neil Young)
4. Gimme Shelter (The Rolling Stones)
5. Within You Without You (The Beatles)
6. White Rabbit (Jefferson Airplane)
7. Changing Of The Guards (Bob Dylan)
8. The Boy In The Bubble (Paul Simon)
9. Soul Kitchen (The Doors)
10. Smells Like Teen Spirit (Nirvana)
11. Midnight Rider (The Allman Brothers)
12. Pastime Paradise (Stevie Wonder)

 ここのところ、これが家のステレオに入れっぱなしになってる。

 60歳のおばあさんなんだよな。こうして牛乳瓶眼鏡をかけていると、NYのインテリ女流評論家という感じ。伝説のCBGBの最後の夜で「エレジー」の中で、ここに出演した物故者を読み上げる姿を見ていると、泣けてくる。彼女もリチャード・ソウルの名前を読み上げるところで、思わず声を詰まらせる。
 この新しいカバーアルバムも、当然の事ながら物故者の曲が多い。半分近くは物故者の曲だ。ビートルズからも、"Within You Without You"とジョージの内省的な曲というのが象徴的な気がする。そう考えると、このアルバムが一種の葬儀のようなものに思えて仕方がない。「ロックは死んだ」なんて10年に1度繰り返される営業文句ではないし、それが何を葬らっているのかも明示されているわけではないのだが。それは一つの世代の避けがたい肉体的な衰えやいつかやってくる死なのかも知れない。いまさらではあるが、彼女の夫のフレッド・スミスもそうだし、文字通りの死、その死に対する敬意としての静謐さみたいなものがアルバム全編を貫いているような気がする。決して、それが明示されていないだけに、直感的なものとして出ているという意味で、すごく重い。ここでカバーされている存命中の人のうち、今年中に2,3人死んでもおかしくないような気がするくらいだ。
 それにしても、ここまでメジャーなアーティストばかりのカバーというのも珍しい。一つや二つは「え、この曲、何?いいじゃないの!」というのを普通入れてみたくなるんじゃないかと思うけど、見事にメジャーなアーティストの曲ばかりになっている。その結果、期せずして彼女自身がこれまでに経験してきたロックの歴史になっている。一人の人間の中に消化され蓄積されてきた時間が出ているんだと思う。この曲を彼女はどこで聞いていたのだろうか。その曲をこうして今彼女が彼女自身で自分の歌として歌う。こういう表現が可能になるのは音楽だけだと思う。
 意外だったのは、まあ、Tears for FearsNirvanaも自分より若い人という意味ではそうだけど、Jefferson AirplaneとAllman Brothersで、当時はみんなああいうサイケデリックというのを聞いていたんだなあ。今聞くとドラッグそのものっぽいという感じは全然しない。でも、こういうのを野外で大きな音でマリファナ回しながら聞くのは凄く解放感があって気持ちいいんだろうなあ。音楽としては、今聞くと素直でのびのびとしたナチュラルなフォークに聞こえてしまったりするんだけど。さすがに、この辺は同時代的な経験あるわけじゃないから想像だけれど。大体、グレース・スリックというと、松任谷由美の「グレース・スリックの肖像」の方がすぐに頭に浮かんでしまう(十二分に古いが)。『あなたの 長い髪と 激しい歌が 好きでしたー』と言うけど、その激しさというのが、実感ないんだよな。懐メロの懐メロだ。。。そういえば、松任谷由美ってモップスのおっかけだったんだって聞いたけど、鈴木ヒロミツもこの世にいない。。。
 Stevie Wonderが入っていて、The Whoが入っていないというのが、彼女がたどり着いた今の心境なのかもしれないなあ、と思う。これはこれでいいけど、昔のブートレッグ欲しいなあ。昔見た白黒のひどい画質のビデオのライブ、もう一度見たいなあ。ステージからダイブしたり、なんかすごかったんだよなー。
 まあ、そういう薀蓄とか思い入れ抜きに若い人がこれを聞いてどう思うか?というのは、わからないけど。
http://www3.ocn.ne.jp/~zip2000/patti-smith.htm