イタリア映画祭(4):「結婚演出家」、「私たちの家で」

イタリア映画祭2007 公式ホームページ

「結婚演出家」
(2006年/100分) 監督:マルコ・ベロッキオ
Il regista di matrimoni (Marco Bellocchio)


 相変わらずオチ無しのマルコ・ベロッキオ。でも、いい、これは。やっぱり、他の監督とはちょっとレベルが違うかな、という感じ。主人公について侯爵がいうセリフ、”巨匠の中の小物、イタリアでだけ巨匠扱い”って、結構自嘲気味に言っているんだろうけど、それだって立派なもんだ。巨匠は巨匠。死んだふりまでして賞をとる映画監督とか、相変わらずシニカルだな。 思わせぶりなオチがあるんだか無いんだかなミステリー仕立てというと、ジャック・リベットもそうだけど、リベットはおフランスエスプリなゲームという感じのオチにならないオチなんだけど、ベロッキオはもっと真面目というか思わせぶりというか、インテリというか、そこは作品によっても好き嫌いが出る。どっちも血みどろの結末にはしない傾向があるんだけど。
 それにしても、この監督はすごい女優引っ張ってくるな。「肉体の悪魔」のマルーシュカ・デートメルスもそうだったけど、大輪の美女という感じのグラマーがこの人好きなんだな。そのうえ、サミ・フレーだもんな。渋すぎる。
 ベロッキオというとミラノとか北部イタリアのイメージだけど、シチリアを舞台にしたところで、新鮮味があったかな。あのお屋敷が、何せ良い。あそこは、ローマ時代からローマとイスラムが取ったり取られたりしていたから、イスラム様式建築のカトリック教会とか、訳分からない建築あって面白いんだよね。

「私たちの家で」
(2006年/101分) 監督:フランチェスカ・コメンチーニ
A casa nostra (Francesca Comencini)


 ミラノを舞台にした群像劇。お金、暮らし、仕事、そして、愛。だれもが、それらの軋みの中で生きている。そんな人たちがあるときは関わり、ある時はすれ違う。
 なかなかの力作なんだけど、ちょっと詰め込みすぎかな、という気はする。話についていくのが大変。なかなか良かったんだけど、ちょっと個々の人物描写に入り込みすぎたかなという嫌いはある。そこが魅力なんだけど。これが、アルトマンだと、このキャラクターはデフォルメやりすぎかな、というのはあるけど、割に一つ一つのシーンが独立してそんなに複雑に人間関係が入り組むわけではないのでついていけるけど、これは一人一人の人間関係が入り組んでいるし、人物をちゃんと描いているので複雑で大変。群像劇と言うよりは、やたら登場人物が多い映画になっていたかな、と思う。それでも100分でここまでまとめたというのは、すごいと思う。この人は七光りとは呼べないな。