イタリア映画祭(5):「N‐私とナポレオン」、「マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」

「N‐私とナポレオン」
(2006年/110分) 監督:パオロ・ヴィルツィ
N -- Io e Napoleone (Paolo Virzi)


ナポレオン・ボナパルト - Wikipedia
 1814年、エルバ島に追放されたナポレオン。彼の引き起こした戦乱の犠牲の余りの大きさから反感を持ち暗殺を企てる主人公の教師が、ナポレオンの回想や思索を筆記する仕事を与えられ‥‥。という喜劇。オメロ・アントヌッティが主人公の恩師役で出ていたけど、久しぶりに顔を見ることができて、それだけでも嬉しかった。良くできたコスプレはやっぱり楽しい。こういう喜劇やらせるとホントにイタリア映画上手いんだよな。気合い入れて見に行くという感じの映画じゃないけど、このイタリア映画祭で片っ端から見ていると、毎年何本かはこういう良くできた大人の喜劇があるから、それが楽しみなんだよな。喜劇って、解説とか評論とか評判とか広告とか、何聞いても、実際に自分で見てみないと本当に面白いかどうか、絶対分からない。なので、とにかく見なきゃいけないんだけど、こういうまとめてとにかく見るという機会じゃないと、ついつい見逃しちゃうんだよな。

マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶」
(2006年/102分) 監督:マリオ・カナーレ、アンナローザ・モッリ
Marcello, una vita dolce (Mario Canale, Annarosa Morri)


マルチェロ・マストロヤンニ - Wikipedia
マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni) のプロフィール - allcinema
 何だか、しみじみしてしまった。こういう人はもう出てこないかもしれないなあ。優雅で、誰からも愛される人間味があって、しかも色気のあるラテンラヴァー。役柄も悲劇から喜劇まで、コメディから知的な作品まで、何をやらせても彼らしくて、しかも見事に役柄にはまっていた。役者として天才なんだけど、天才だなんて言わせないような気さくさと親しみやすさがあった。というのは、本当の華があったということで、本当に素晴らしい俳優だったと思う。イタリア人であると同時にヨーロッパ人だった。ということは、イタリア人らしいイタリア人だったと言えるんだろうか?その辺よく分からない。でも、彼抜きの戦後のヨーロッパ映画史なんて考えられない。その割には、いわゆるヌーベルヴァーグの世代の監督の映画には殆ど出ていないんだよな。というのは、やはり家族的な人間関係というのをまず大切にした人だったのだと思う。大スターすぎた、ということもあるだろうけど。
 月刊プレイボーイ5月号で塩野七生とアントニオ・シモーネというイタリアの映画業界の人が「マストロヤンニは、なぜ女性にモテるのか?」と題するこのドキュメンタリー映画に関する対談やっているんだけど、このアントニオ・シモーネの話がなかなか鋭くて、面白かった。そこで知ったけど、パリでの葬儀の喪主はドヌーブとその間の娘で、ローマでの喪主は正妻とその間の娘とソフィア・ローレンだったんだって。うわ〜。このドキュメンタリーでも、いろいろな女優が他にも出てくる。アヌク・エーメは品の良い綺麗なおばあちゃまだったので感動した。元クラウディア・カルディナーレのおばあちゃんは、見なかったことにする。トニーノ・グエッラって、こういう人だったのか、しゃべるのを始めて見た、というのも、収穫。