『李香蘭 私の半生』: 山口淑子, 藤原作弥
- 作者: 山口淑子,藤原作弥
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 文庫
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読了。ついつい夢中になって読んでしまった。甘粕正彦は「李香蘭を守る会」のメンバーだったそうだ。川島芳子ともデビュー前からのおつきあい。「個人の意志をこえて”昭和の歴史”に絡んでしまった李香蘭をきちんと見つめ直さなければならないと思い出したからだ。」と、自伝の執筆理由を語っているけれど、これは誇張でも何でもない。この人はそういう運命の元に生まれてきたのだなと思う。
文藝春秋の今月号で昭和の美女という特集をやっていたが、李香蘭は第10位だった。最後に映画に出演したのは1958年。参議院議員を務めたのは1974年から1992年。大女優ではあるが、これという代表作がある訳でもないと思う。それでこの位置をいまだに占めるのだから、やはり昭和を語る上で外せない人なのだ、ということだ。
この本には、子供の頃からの写真も多数出ているのだが、これが興味深い。子供の頃の写真もやはりかわいい。しかし、かわいい子供というのは、余り顔形が整っていると、どこかで何かバランスが狂ってくるような気がする。しかし、この人の子供の頃は、子供らしいかわいさなのだ。それが年を追う毎に、年齢相応の美しさを獲得していき、年と共に完成していくのだ。これも、そういう星の下に生まれたのだとしか言いようがない。
この時代の満州の話なので、運命に翻弄されて非業の死を遂げていく人も沢山登場する。悲惨な話も数多く出てくる。こうした部分については、全く簡潔な描写に徹している。これは、共著という形を取っていることもあるだろうし、中国的な感覚なのかもしれない。が、結局、余計な描写をしても悲しみを書き尽くせる訳ではない。事実を正確に書くこと。それだけが故人へ敬意を示すに相応しい方法だということだ。自身の家庭のことについても隠し立てすることはないし、こうしたこの人の姿勢はやはり人間として立派だと思う。
勿論、ここには書けないような話や、墓まで持っていく話も、この本の何倍もあるのかもしれない。しかし、こうしてこういう形で言わねばならないことは語った、と言うことなのだと思うし、それで十分なのだと思う。
- 作者: 山口淑子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 単行本
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