「祇園囃子」:監督 溝口健二@東京国立近代美術館フィルムセンター”没後50年 溝口健二再発見”

上映会情報没後50年 溝口健二再発見

’53(大映京都)(原)川口松太郎(脚)依田義賢(撮)宮川一夫(美)小池一美(音)齋藤一郎(出)木暮実千代若尾文子河津清三郎進藤英太郎、菅井一郎、田中春男、小柴幹治、石原須磨男、志賀迺家辨慶、伊達三郎、浪花千榮子、毛利菊枝

 ”溝口自身「会社のいうことをきいた間に合わせの仕事」と述懐している”そうだが、それで、このクオリティーって、唖然とするしかない。フェルメールとかベラスケスの西洋絵画なんて馬鹿馬鹿しいほど粗雑で幼稚で単純なものだったんじゃないだろうか、と思わせるような、冒頭の京都の町並みの奥行き。若尾文子様がお花の先生に「基本的人権」を訪ねるシーンなんていうさしたる見せ場でもないシーンでも、さりげない移動が画面に呼吸を作り出す妙。家の前の路地の奥に見える花火や人の流れが作り出す空間の美しさ。これが、「間に合わせの仕事」というなら、それはこのレベルは当然と言うことで、如何に途方もなく素晴らしいスタッフや製作所をこの当時の日本が持っていたのかということの証左に他ならない。
 そして、若尾文子様の初々しいこと。この蕾が増村保造の映画で女として花開いていくのだ、と思うと、一人の天才も後世に伝えられるのは、ひとえに人なのだなあ、と深い感慨を覚える。このとき、若尾文子様二十歳である。