生誕百年特集 映画監督 成瀬巳喜男「朝の並木道(60分・35mm・白黒)」

golgo1392005-09-18

成瀬のオリジナル脚本は、田舎から上京した女のはかない恋物語。上京した千代(千葉)は懸命に求職活動をするも、なかなか望む仕事にありつけない。結局友人の勧めでバーのホステスをすることになり、そこで出会った常連客の小川に淡い恋心を抱く。

’36(P.C.L.映画製作所)(脚)成瀬巳喜男(撮)鈴木博(美)北猛夫(音)伊藤昇(出)千葉早智子、赤木蘭子、大川平八郎、御橋公、山口ミサヲ、清川玉枝、三島雅夫、伊達里子、清川虹子

 本当は、朝から行かなければいけないんだろうけど、休みの日に午前中から出かける気力がない。涼しくなってきたし、頑張ろうかなあ、と思ったら、明日はお休みToT。作品選ばず、行けるときにせっせと通うという方針。
 知人を頼って上京してきたが、丸の内の大きな会社に勤めているはずの彼女は、カフェで住み込みの女給をしている。探せども、仕事は見つからない。田舎に帰っても、兄さんが嫁さん貰えば邪魔者だし、帰るに帰れず、彼女も結局カフェで働くことになる。好きなお客さんもできるが、一緒になろう、伊豆に新婚旅行だ、というはずが、彼の様子がどうもおかしい。検察を見て、山の中に逃げる二人、実は会社の金を使い込んできたんだ、一緒に死んでくれ、いやよ、いやよ、自首して頂戴、というところで夢は覚める。そこへ仙台に栄転になると挨拶に来る彼。彼から貰った連絡先を彼女は河に投げ捨てる。その丸められた紙が流れていくところで映画は終わる。
 「一緒に死んでくれ!」「自首して!」「一緒に死んでくれ!」「自首して!」がバカ受けしてた。これが成瀬巳喜男を代表する名作だとは間違っても思わないけど、やるせなさだけはしみじみと伝わってくる。
 カフェの女給さん、と言うのはこういう世界だったのだなあ。今から見ればのどかで純情な話だけど。これを今ネットカフェのメイドさんに置き換えて翻案したら、どうなるのだろう?少なくとも、簡単には、これほどやるせなくならないような気がする。そういえば、相米慎司の遺作になってしまった「風花」は、どうにもやるせなかったなあ。題材も近いし。