「半島を出よ」:村上龍
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/03/25
- メディア: 単行本
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- 読了。圧倒的な想像力。最後の数章はもう感動的。カッコイイ!村上龍の最高傑作だと思う。「愛と幻想のファシズム」から後は読む気がしなかったから、読んでいないけど、それは読む気にさせてくれなかったからなので、これが最高傑作だと思いこむことにする。
- 結局、最後にはイシハラ軍団が高麗遠征軍を殲滅してしまうのだが、そういう落ちなんだろうなと思ってはいても、最後まで手に汗を握らされた。章毎に、視点が変わるのも、それが短編連作的なせこせこした体を取らず、一つの事件とは巨大な多面体なのだというスケールの大きさに繋がっている。
- 独裁国家の精鋭特殊部隊による侵略を、変質的なオタクのはぐれ者のアナーキーな集団が吹っ飛ばしてしまう、なんて荒唐無稽な話は、詰まるところ無邪気で世界の厳しさを知らないから駄目な日本人でなければ書けない小説だ。というのは正しいだろうか?
- これを韓国やアメリカで翻訳したらどう読まれるだろうか?北朝鮮で読めるとは思えないが。
- 村上龍は、北朝鮮の兵士の部分とイシハラ軍団の部分のどちらが書いていて楽しかっただろうか。アクションに関しては、北朝鮮の兵士の部分の方が断然筆がさえているような気がする。イシハラ軍団に関しては、趣味の話の方が乗っているような気がする。いずれにしても、彼としては、どちらも現在の体制を滅茶苦茶にしようという話だから、乗っていたんではないか?
- 日本はこれから没落する、と言うところから始まる話が最近多い。政治、経済、社会、見渡してみても明るい希望がない。でも、当座はそれでもそれなりに成り立っている。しかし、無関心が許される余裕もどんどんなくなっている。本当に日本が崩壊するほどのところまで落ち込んだ訳でもないが、それはさして遠くない将来のことに思える。とはいえど、解決する道は見えない。ただ、漠とした不安がある。では、どうするか?まず、不安を顕在化しよう。したい。目に見えるようになれば、形を与えれば、もはや、それは不安の対象ではないから。
- 村上龍の素朴な欲望、それは破壊衝動という形を取るのだが、それはやはり魅力的だと思う。愚鈍なまでのアナーキズムへの憧れ。アナーキズムとは、そもそも、愚鈍で単純な夢想家にのみ許される夢想だ。それが、社会や政治をどう変えるか?と言えば、何も変えはしないだろう。時代の大きな流れに飲み込まれていくだろう。しかし、許される夢想は存在する。
明日も来てよかですか、と部屋を出るときにそう聞くと、イシハラという人が振り返って、言った。
「それは、お前の自由だ。」
- 自分が望むことをすること、それこそ我々の自由だ。