「戒厳令」監督:吉田喜重

  • 1973年、110分、現代映画社+日本アート・シアターギルド共同製作、日本ATG配給、スタンダードサイズ
  • 「同時代史」三部作の最後。ストーリーの構成は一番シンプルで、その点に関しては悩ましいところはないが、それ以上に北一輝という存在自体の不可解さが怪しく迫ってくる。『その夢の中で私は天皇だった。』と怯える北一輝戒厳令の厳粛さの中での権力奪取を夢想し、正午の白昼の丘から息子に語るともなく語り続ける北一輝。盲目の傷痍軍人天皇を巡る問答をする北一輝。何に彼は怯え続けているのか?人を脅かす側、体制を脅かす側、テロリストの側の彼が何に怯え続けているのか?それは、朝日平吾の遺品ではなく、宮内庁から届けられた白紙の領収書であることは間違いない。