『森茉莉・贅沢貧乏暮らし』

  • 作家の私生活や家の写真集というと、澁澤龍彦の自宅の写真集(篠山紀信撮影だった?)がまるで絵に描いたように見事な澁澤龍彦の世界で、一つ一つのコレクションがまるで主の不在に口をつぐんでしまった妖精の化けた姿のようで、感動したのを思い出すし、三島由紀夫の家の場合は、庭のギリシャ彫刻風の彫刻がいかにもと言う感じで、どことなくちょっと自意識過剰な感はあったが、きちんと整理された部屋の雰囲気が断崖に揃えられていた靴のような処があった。この『森茉莉・贅沢貧乏暮らし』は、そういう大文学者の立派な邸宅の写真とは全然違うが、遺品や復活料理の写真から不在を通じて森茉莉なる人物が生きた時間が描き出される。
  • 鴎外がわざわざドイツに注文し、シベリヤ鉄道で何ヶ月もかかって運ばれてきた洋服は全て失われたが、ただ一つ残った玩具の首飾り。空間を超え、時間を超え、残された首飾り。
  • 山口百恵の結婚式をアパートの六畳間で見ながら、自分の精養軒の結婚式と比べて、『品がない』と本気でこき下ろす老婆。
  • 最近、どこかで島田雅彦の家の紹介を見たけど、快適そうだったが、当然、どこにもこんなオーラはなかったなあ。
  • http://www.morimari.net/
  • http://homepage2.nifty.com/shirakawa/bungakukan/