「ボヴァリー夫人」 監督:アレクサンドル・ソクーロフ @シアター・イメージフォーラム

原題:Spasi I Sokhrani
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
原作:ギュスターブ・フローベール
脚本:ユーリィ・アラボフ
撮影:セルゲイ・ユリズジツキー
美術:E・アムシンスカヤ
編集:レーダ・セミョーノワ
製作国:2009年ロシア映画
上映時間:2時間8分

 『ボヴァリー夫人』というのは、あらすじにしてしまえば、ブルジョワの医者の奥さんが結婚の倦怠に倦み、不倫に溺れて浪費の挙げ句に破産して自殺する、という話です。フローベールはこの作品で裁判までやったみたいですが、今となってみれば、新聞の社会面を飾ることすら難しいのかもしれません。ウシジマ君のネタにもならないかな、という感じです。

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原作『ボヴァリー夫人』と自作に寄せて  ----アレクサンドル・ソクーロフ
なぜフローベールの小説をテーマに映画を創ったかには、一つの答えしかありません。中学生の頃、読んだ文学の中で、『ボヴァリー夫人』が、最も明快な印象を与えられた1冊だったのです。8年生(日本の中学2年生)でした。同じ時期に、ラジオドラマでも放送され、それも聴きました。人間が人生でそれほどの悲劇に遭遇するということに、私はひどく驚いたのです。

 まあ、ロシアの中二病が高じたのかもしれません。しかし、中二病でこれが作れてしまうところが、天才の恐ろしさでしょう。『ボヴァリー夫人』だと思ってみると、訳分からないです。私はフランス語は大学の教養レベルで落ちこぼれているので、フランス語かどうかくらいは何とか分かるレベルですが、これはロシア語とちゃんぽんなんでしょうか。フリーダムすぎなのか、なんなのか。この作品は、もともと1989年の作品で、今回の上映は短縮盤です。
 冒頭のシーン一つとっても、窓の外の奥行きとか、部屋の狭苦しさとか、商人の頬の傷とか、ただごとではない。そのただごとではないものが、幻想ではなく、不可解なリアリティを持って存在する、このソクーロフの世界。