「リミッツ・オブ・コントロール」:監督 ジム・ジャームッシュ

THE LIMITS OF CONTROL(115分)
監督: ジム・ジャームッシュ
撮影: クリストファー・ドイル
音楽: ボリス
出演: イザック・ド・バンコレ コードネーム:孤独な男
アレックス・デスカス コードネーム:クレオール
ジャン=フランソワ・ステヴナン コードネーム:フランス人
ルイス・トサル コードネーム:ヴァイオリン
パス・デ・ラ・ウエルタ コードネーム:ヌード
ティルダ・スウィントン コードネーム:ブロンド
工藤夕貴 コードネーム:モレキュール(分子)
ジョン・ハート コードネーム:ギター
ガエル・ガルシア・ベルナル コードネーム:メキシコ人
ヒアム・アッバス コードネーム:ドライバー
ビル・マーレイ コードネーム:アメリカ人


 近頃、映画はすっかり御無沙汰でいかんなあ、と思っていたのだけど、さすがにジム・ジャームッシュは見逃せないんで、早速見に行ってきましたよ。やっぱり、かっこいいっす、ジム・ジャームッシュ。最後、あの鉄壁の警備網を想像力で一発突破するとは。唖然としたよ。やっぱり、人間が大きいよ。謎は謎で良いんだよ。この訳の分からない話を貫いて、作品にまとめてしまう度胸。別に、俺たち観客は全てを理解したいなんて思っちゃいないのさ。楽しませてくれ。驚かせてくれ。打ちのめしてくれ。魅惑してくれ。それだけのことなのさ。満足させてくれれば、少々の辻褄や細かいことなんか気にしやしないのさ。だって、これは映画なんだから。エンターテイメントなんだから。辻褄を必死に合わせようとして、それが合ったとも思えないまま、「二十世紀少年」を未完にすることも出来ずに、映画化しちゃうのって、人間が小さいよなあ、なんてことも頭をよぎったり(映画は見てないし、見ないけどさ)。
 ニコチン切れると後半はうつらうつらしたけどさ。だって、次から次へと、エージェントが出てくるだけなんだもん。そのエージェントを見ていると、確かに面白いんだけど、余りにその繰り返しが長い(笑)。ニコ中には、集中力って2時間ぎりぎりなんだよ。この繰り返しが、まさにジャック・リベット。ミステリアスな陰謀というテーマ自体もリベットしてるけど。その陰謀が迷宮化しているという点では、まさに、これはオーソン・ウェルズのB級扱い作品なんだ。つまりさ、・・・。滅茶苦茶面白いのに、どうしようもなく眠くなる(爆)。後半、最後のクライマックス近くは朦朧としてました・・・。くそ、もう一回見てやるからな、覚えていろよ。
 その素晴らしさの一因は、この音楽の素晴らしさ。このBorisって、日本のバンドなんだね。
BORIS - Wikipedia
ジム・ジャームッシュは、どこでこういう日本のロック・バンドを聴いているんだろう?これは、すごい。私は知らなかったけど。ジム・ジャームッシュの映画の音楽って、ニール・ヤングがサントラとか、ホワイト・ストライプやイギー・ポップやトム・ウエイツが出演とか、そういう人ですよ。それが、日本のポスト・ロック・バンドがサントラという時代になったんだね・・・。

 工藤夕貴の英語の発音も立派。やるじゃん。まあ、これも日本人目線の感想だけどなあ。しかし、スペインが舞台ということで、英語とスペイン語とフランス語と英語が飛び交う。工藤夕貴、日本語もあったか。これは、アメリカ人の映画では普通絶対ありえないんだけど、ジム・ジャームッシュの映画ではいつものことではある。でも、見る方にしてみれば、どうせ字幕がつくんで、適当に一つの言葉に丸め込んでも良いか、というと、そんなことなくて、冒頭の空港のやりとりなんかにしても、言葉が通じないと言うことが、そのシーンの重要な要素なんだな。その辺が、やっぱり、すごい。
 シネカノン有楽町2丁目で見たんだけど、こういうミニシアターが銀座にも出来たのは嬉しいな。ミニシアターというと、渋谷、という感が余りに強いので。映画を見れば、食事もするし、買い物もするんだから、こういう集客力の源泉は税金を優遇するとか、色々、区レベルでも考えればいいのにね。若人以外は、渋谷なんて行きたくないんだから。
 まあ、そうしたウダウダはさて置いて、映画に戻るとですね、冒頭から極端な仰角とか、オーバー露光のショットが多くて、びっくり。オーソン・ウエルズっぽいね、これ。こういうのって、アート、アートしがちで、ジムは絶対やらない類のショットだったと思うんだけど、それが冒頭からばりばり出てくる辺りがこの映画のおもしろさかな。そういうのあえてアリみたいなモードか。建物とかインテリアとか一々格好いいんだけど、それがうっとおしくならないのが不思議だ。