「ビジネス・インサイト―創造の知とは何か」: 石井 淳蔵

ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)

ビジネス・インサイト―創造の知とは何か (岩波新書)

 読了。キットカットが、九州弁の「きっと勝っと」の語呂合わせで受験生向けキャンペーンを行って、市場を活性化した、というのは面白いけど、それがビジネス・インサイトとか言われてもなあ。そういうひらめきを生み出す「暗黙知」の重要性とか言われてもなあ。
 個別の事例を体系化する、というのは日本人が苦手だけど、本当は大切なことだとは思う。でも、それを暗黙でなくした瞬間に、本当の暗黙の部分がこぼれ落ちる。すごくつまらない二番煎じや、頭だけで考えた机上のアイディアになってしまう。その辺が、学者さんには悩ましいんだな、ということはよく分かった。コネタは面白いし、真摯な学者さんだなあ、と思うけど、それ故、学者の愚痴になっているところが多い。それはそれで面白いんだけど。
 岩波新書らしいビジネス書、というのが、あり得るんだな、というのは、ちょっと不思議な感じだ。こういう「実学」は、それこそ「ブルー・オーシャン」とか、当たり前のことでもコピーライター的な張ったりかました方が本も売れるだろうし、そのほうが結果的にも色々活性化されるんじゃないのかなあ。その意味じゃ、あんまりこういう風に真面目にやらない方が、やっぱり世の中の役に立つのかもしれないねえ。