「動物農場」: ジョージ・オーウェル
- 作者: ジョージ・オーウェル,George Orwell,高畠文夫
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1995/05/01
- メディア: 文庫
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フランシス・ベーコンとかゴールドウインとか、イギリス人のこういうグロテスクな感覚というのは、一体どこから来るのだろうか。それは、彼らがグロテスクなものの見方を好むということではなくて、事実は事実として受け止め、それから、一呼吸置いて、それが何故か考える、分析する、反応する、ということなのではないだろうか。そこにワン・クッション持っているような気がする。観察と思考の分節がきちんとできているんじゃないだろうか。当たり前のようで、これは凄く難しい。
それは、一つには、見るという行為は、自分の視界の範囲内に制限されてしまうからだ。その視界というのは、必ずしも自分自身により決められるものとは限らない。結局、自分が見ることができる範囲というのは、時代や自分の属する集団や社会によって規定されているものだ。しかし、「観察は自由だし、色々な意見がある。何かを見て、何かを感じるのは、これは止めようがないし、それはそれで事実だし、その受け止め方は、当然人によって違うよね。だから、それは違って当たり前。」という前提が、イギリス人はやたらと深いような気がする。だから、他人に対して無関心を装うのが礼儀であったり、変人が多いのではないだろうか。そういう国だからこういう人が出てくるのではないだろうか。
寓話というと、為政者を蛙やら何やらに例えて、なんと愚かなことか、という気の抜けた新聞の政治マンガのようなイメージが連想されるが、これはそういう「寓話」というジャンルを超えたものがある。
これは1945年に刊行された本で、スターリンやトロツキーが当然念頭に置かれているのだろうけれど、この構図は連合赤軍でもオウム真理教でも何も変わっていない。閉鎖された社会の中では、権力は常に暴走する。その恐ろしさはここに痛烈に描かれている。
しかし、最後にナポレオンが二本足で歩き始めるあたりに至っては、唖然。寓話と言って笑って済ますには怖すぎる。
文庫の帯を見ると、これは宮崎アニメになるらしいが、どんなものになるのか、想像できない。子供が見たら泣くようなものになりそうな気がする。
【訂正】1954年にアメリカでアニメーション化され、2008年に三鷹の森ジブリ美術館提供作品として再公開され、6月にDVDが出るんだそうです。
http://http://www.ghibli-museum.jp/animal/