「人のセックスを笑うな」:監督 井口奈己

人のセックスを笑うな(2007)、137分
初公開年月 2008/01/19
監督: 井口奈己
原作: 山崎ナオコーラ人のセックスを笑うな』(河出書房新社刊)
脚本: 本調有香、井口奈己
撮影: 鈴木昭彦
美術: 安宅紀史
美術監督: 木村威夫
衣装: 橋本庸子
編集: 井口奈己、増原譲子、海野敦
出演: 永作博美 ユリ
松山ケンイチ みるめ
蒼井優 えんちゃん
あがた森魚 猪熊さん

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 見逃していた映画を新文芸座で二本。嬉しい。ここのところ、映画あんまり見ることが出来ていないからなあ。
 まず、これ。監督のトークショーは見逃してしまった。これは超傑作。
 このうだうだ遊んでいる感じが素晴らしい。人間、そんなたいしたことを毎日しているわけじゃない。歩いたり、話したり、自転車に乗ったり、食べたり、寝たり。そこをこんなにいきいきと描けるというのは、すごいことだ。多分、この人の映画はこれからどれ見ても面白いと思う。衣食住たりて礼節を知るじゃないけど、それがきちんと楽しく描ければつまらない訳がない。
 もう最近は少年マンガと少女マンガというジャンルの境界も大分曖昧になっているけれど、「物語」が常に優位性を持つ"少年"マンガと「感覚」と「心理」が「物語」を支配する"少女"マンガというのは、性差別としてよりも、むしろジャンルになってきた。そういう意味で、この映画は"少女"映画というのはなんだけれど、新しいジャンルの映画(「日本映画」といって良いのかどうか分からない)を発明したかもしれない。ジェンダー的な議論はあんまりしたくないけど、こういう映画を作れる男って思いつかない。あ、あえて言うなら、この自由さってジム・ジャームッシュっぽいかも。
 まあ、それと白状するとですね、蒼井優ちゃんのコスプレが萌えです。ツボに火が点けられました。あの映画館の受付姿とか、ガテンユニフォームとか、毛糸のキノコ帽子とか、胸キュン、ズドーンです。永作博美も、鬱陶しくない桃井かおりって感じで良いです。松山ケンイチくんも、草食といえばこの人、というポジションですね。
 このゆるい話にもかかわらず、冒頭の部分と最後の部分のシーンをシンメトリーにするというのは、手が込んでいて、一生懸命脚本段階から考えたんだなあ、と思いました。でも、そういうとこよりも、長回しの演出やロケ場所の選び方とか、その辺のセンスがすごく良い。