「中春こまわり君」 山上たつひこ

中春こまわり君 (ビッグコミックススペシャル)

中春こまわり君 (ビッグコミックススペシャル)

 読了。すごい世界だ。少年警察官のこまわり君も38歳、営業マンで、家庭を持ち男の子がいる。今も西城君は同僚。ジュンちゃんは離婚した元夫の父親の介護に追われる毎日。アベ先生も内蔵が悪く、痛風のこまわり君と病院でばったりしたりする。リアルな現実ばかりで、みんな大変で、あんまり幸せでもない。
 こまわり君も相変わらず象になったり、往年の芸を披露してくれるのだが、騒ぎを引き起こすのはこまわり君ではなく、むしろ、こまわり君は周りの不幸や問題に対応するために駆けずり回る責任ある大人なのだ。その過程ではいろいろやってはくれるのだけれど、大人なのだ。そのままちゃんと大人になってしまったのだ。思わず、そうか、こまわり君もいろいろ大変だなあ、大人の人生は苦いよなあ、としみじみしてしまう。まさか、こまわり君でしみじみしてしまうなんて。渋すぎる。
 これはセルフパロディという訳ではないし、なんと言えばいいのだろう。なんとも不思議な世界なのだ。さすが、奇才山上たつひこ