「ル・オタク―フランスおたく物語」 (講談社文庫): 清谷 信一

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)

ル・オタク フランスおたく物語 (講談社文庫)

 読了。1998年に出版された本の文庫化だから、時流に乗って掘り起こされたのだろうな。これを10年前に出していたというのは偉い。フランスの出版やメディアのありようが分かって面白い。また、日本から漫画やビデオを輸入して販売を始めた1955年生まれのドミニクさんの商売や彼の人生の話が面白い。68年の五月革命を13歳で迎え、家出を繰り返し、フランスのマンガ=バンド・デシネの販売を始め、そこから日本の漫画に手を広げるようになるのだけれど、この辺りの時代背景や業界の事情も含めて、ジャーナリスト的に手際よく説明していて興味深かった。かなりエキセントリックなテイストはあるけれど、その分わかりやすくなっている。
 2008年のジャパンエキスポには、4日間で13万人も集まったそうだ。アニメ、マンガ、ゲーム、Jポップ、プロレス、ゴスロリファッション、なんでもありで、永井豪小池一夫、「デスノート」の小畑健などの人気作家も登場したり、ヴィジュアル系のコンサートがあったりと、なんか、すごいイベントになっているらしい。
http://www.eurojapancomic.com/fr/japanexpo.shtml
http://www.eurojapancomic.com/index.shtml
 ただ、ジャーナリスト的な視点からまとめられているので、6章の”日本のオタクは世界に通じる”でも、「何故、フランスでも日本の漫画やアニメが受け入れられたのか?」という問いに対して、「低俗だ、文化侵略だ、けしからん」というのは、間違っているという論法の指摘に終始している。これはこれで正しいし、社会現象的に全体を論じるにはこれで良いかもしれないのだけれど、それは反対の反対は賛成なのだ、という論理で、作品の本質としてどう受容されたんだろう?という疑問はある。それはまた別の人が論じればよいのだろうけれど。
ル・オタク フランスおたく物語 今月15日発売! 清谷信一公式ブログ 清谷防衛経済研究所 /ウェブリブログ
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