まとめ:「 このマンガがすごい! 2009」のオトコ&オンナ編ベスト10全作を読んでみた

このマンガがすごい! 2009

このマンガがすごい! 2009

 最近は漫画雑誌の数がやたら増えた。いちいち読んでいられないので、スピリッツとモーニングしか、雑誌の形では読んでいない。となると、勢い、単行本でフォローしないといけないということになる。でも、何が面白いのか、オッサンにはついて行けない。周りに詳しい人がいるという訳でもないし(実は、詳しすぎる人は結構いるのだが)。そうなると、やっぱりこういうブックガイドが必要になる。ネットでも探せば色々あるのだろうけど、個人サイトではやっぱり色がつく。その色がこういう状態だと良く分からない。となると、ある程度フィルタリングしたものが欲しい。まあ、あんまりメジャーなものばかりでも、それは知っている、ということになるし、余りにマニアックなのとか「萌え」なのに偏ってもついて行けないので、自分にとってそこら辺の加減がちょうど良いように見えたので、「 このマンガがすごい! 2009」のオトコ&オンナ編ベスト10全作を読んでみた。結構こういう人はいるんじゃないのかな。
 そうしてオトコ&オンナ編ベスト10全作を読んでみると、いくつかの傾向が何となく見えてきたような気がする。

▼オトコ編
1 「聖☆おにいさん」 中村光 / 2 「宇宙兄弟」 小山宙哉 / 3 「GIANT KILLING」 綱本将也(作)/ツジトモ(画) / 4 「3月のライオン」 羽海野チカ / 5 「深夜食堂」 安倍夜郎 / 6 「きのう何食べた?」 よしながふみ / 7 「アオイホノオ」 島本和彦 / 8 「よつばと!」 あずまきよひこ / 9 「俺はまだ本気出してないだけ」 / 10 「ファンタジウム」 杉本亜未
▼オンナ編
1 「坂道のアポロン」 小玉ユキ / 2 「駅から5分」 くらもちふさこ / 3 「ちはやふる」 末次由紀 / 4 「君に届け」 椎名軽穂 / 5 「町でうわさの天狗の子」 岩本ナオ / 6 「雨無村役場産業課兼観光係」 岩本ナオ / 7 「ラウンダバウト」 渡辺ペコ / 8 「夏目友人帳」 緑川ゆき / 9 「結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日」 益田ミリ / 10 「少女漫画」 松田奈緒子

  • 王道ストリーテラー系

 男2・3・4・10、女1〜6,8辺りは、やっぱりストーリーや構成が上手くて、面白い。そこのお話の面白さは少女マンガの方が強いのかも。安直なネタや刺激に走ったものって、もっと安直で刺激が強い方向に行くしかないので、どんどんマンガの大地が痩せていくんだよな。やっぱり、こういうストーリーを大切にしたものが何本かないと、週刊誌を買う気しないです。最近は連載と言っても毎号載らないのが当たり前みたいになっているし。それなら、雑誌自体を隔週にしてくれた方がよっぽど良いのに。

  • エッセイ系

 そうは言いつつも、マンガでしか書けないエッセイみたいな感覚勝負の話というのもある。男5,6,7、女7,9なんかは、そう言う系統かな。男5みたいな渋い人情ものというのは、逆に新鮮だった。深夜だけ営業、メニューはほとんどなくて作れれば何でも作るよ、というありそうでなさそうな渋い設定で、登場人物がそう言う時間帯にやってくるような訳ありの人ばかりなので、臭いこじゃれた話には間違ってもならないのがいい。女7みたいな不思議ちゃんの話というのも、最近は少ないのか、なんか、古典的で懐かしいかもなあ。

 男1,4,6,10は女性少年マンガ家。特に、羽海野チカの青年誌登場というのは驚いた。本屋によっては、わざわざ少女マンガコーナーに置いている。「きのう何食べた?」みたいなゲイの話が青年誌に載るというのもすごい。逆に、雑誌の色というのが薄くなっていると言うことかもしれないけど。

  • 蘊蓄系

 男2,4,6,10、女3辺りは、蘊蓄の面白さが、作品の重要な要素になっている。宇宙開発、将棋、料理、奇術、かるた。極めれば深い。博打と同じで、大金とか人生かければ、そこに意味が出てくるんだよね。

  • 人生系

 自分探しニートの男9、独身女子の女9みたいなものも、マンガでないとここまで描けないだろうな。どちらも面白かった。泣けた。

  • マンガのマンガ系

 男7,女10はマンガを題材にしたマンガ。どちらも若い人はリアルタイムで知らないかもしれないので、かえって新鮮かもしれない。こういうのがベスト10の中に入ってくるのが、このランキングらしいところ。

  • 掟破りのキャラ設定

 男1は今年最大の話題作だと思うけれど、キャラ設定の一発芸というのは2巻くらいで飽きてくるんだよな。キリストと仏陀は許してくれるだろうけど、展開に行き詰まってモハメッド登場、イスラムから抗議で連載中止という方向に行ったらどうしよう?というのが、密かな懸念。女5、6の田舎ものの方がむしろインパクトあった。設定もさることながら、お話や絵も良いし、今後も期待大。

 やっぱり、手当たり次第に読んでみると、色々発見があって面白い。マニアックな萌え属性オンリーみたいなものも入っていないので、面白い漫画を読みたいという人には使えるランキングだな、と改めて思った。