The Who: "Amazing Journey"


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 もうすぐ終わってしまうので、慌てて見てきた。これは泣けた。バンドの結成から現在までのストーリーが、当人達の口から語られ、その合間にライブ映像が挟まれて、さらにはスティングやリアム・ギャラガーエディ・ヴェダー、エッジらのコメントが入る、という、まあ、良くあるロック・ドキュメンタリーなのだけど、やっぱり、重みが違う。ピート・タウンジェントの語り口なんか、やっぱり今でもエキセントリックなオーラが出ている。ロジャー・ダウトリーの話し方は、なんかしみじみとしたとこもあるけど、率直で良いおっさんだなあ、という感じ。昔はワルかった下町の職人のオッサン、という感じだよなあ〜。
 最初にロジャーが「この世界には何十億人もの人間がいるのに、俺たち4人が出会ったことが奇跡だ」と語るところがあるけど、もうあれが全てで、そのCHEMISTRYのすごさ、おもしろさが、ロックバンドなのだと言うことを、まざまざと見せつけられた。
 自分が作ったバンドなのに、他の3人は天才だけど自分は違う、と荒れて、追い出されそうになって、このバンドの声になろうと必死だった、というロジャーの話は意外だった。そういや、BECKの千葉クンの話でも、そんなにあったけど、ロバート・プラントにしろ、すごいバンドのボーカルってそういうところはみんなあるんじゃないだろうか。歌歌うだけなら、他の人でも一応出来る訳で、こいつでなければいけないと言う必然性があるか?というのは、難しい問題かもしれない。特に、ソングライターでもないし、あの化け物プレーヤー3人の演奏と歌だけで張り合うというのはすごいプレッシャーだったんだと思う。特に、初期の曲は、モータウンとかブルースの影響が濃かったから、今となってはスタンダードでもあるけど、ロジャーでなくても上手ければ他のボーカリストでも良かったかもしれない、というのは理解できる。そこら辺をがんばって、「トミー」辺りからロジャーが不可欠になったというのは、なるほどなあ、と思う。良い奴だなあ、ロジャー。
 ジョンの金銭問題が再結成のきっかけというのも、身も蓋もない率直さで語られるのだけど、それでつきあって再結成するって言うのも、なんかフーっぽい。それで、いい年こいて、薬やって、コールガール買って、腹上死。「やりたいことやって、死んだんだから最高だよ。」というのも、なんか、あれだけど、まあ、その通りな訳で。でも、こういう場合の御葬式って、いくらロックスターとは言え、まあ、何なんだろうな・・・。
 ピートの「人生は止めることはできない」というのも、しみじみと重い。「おまえの代わりはいない」という4人。それが3人になり、2人になってしまったとき、2人が選んだのは、ツアーを続けることだった、というのも、なんか、しみじみとしてしまう。ジョンの死後1週間も経たないラスヴェガスのステージで、ピートが「みんなも知っていると思う。何もなかったふりはできない。」と話すところなんか、もうなんて言っていいのか分からない。「いつものように演奏して、振り向いても奴がいない」というのは切ない。元々は、ジョンの金銭問題で再結成したのかもしれないけど、もうそれだけじゃない、というより、続けられるところまで続けるしかない、という境地なんだなあ。
 「パンク・ムーブメントは、フランス革命だった。ビートルズストーンズも殺された。」というピートの言葉も当時の雰囲気を伝えていて、面白かった。でも、ピートに"Who are you?"って酔っぱらって絡まれたら、シド・ヴィシャスだろうが、ジョニー・ロットンだろうが、そりゃ、ビビるよな(笑)。こいつらは手を出さないでおこう、と思うよな。
 そう考えると、やっぱり、今の彼らが充実したパフォーマンスを見せることが出来ているのは、ザック・スターキーに負うところ大きいよなあ。はあ。もう一度、今年のフジ・ロックにでもこないかなあ。

 あ、そうそう、シアターNって、ユーロスペースをリニューアルしたとこだったのね。