「椎名林檎 林檎博08’ 10周年記念祭」@さいたまスーパーアリーナ


 デビュー10周年ということで、「無罪」と「勝訴」からの曲が一杯!もう、なかなかこういう機会はないので、貴重だった。行って良かった。当人的にはこういうのって微妙だろうけど、デビュー10周年の節目ということもあるし、みんな聞きたいのはそこだというのも事実。常に意表を突きつつも、そういうところは外さないのは、やはりプロとしての自分に対する厳しさだと思う。そういう本質的なところで、彼女はとてもストイックだ。
 最初から最後までフル・オーケストラの豪華な構成。ここいらが10周年感。バンドは亀田師匠以外はギターもドラムも新しい人で、キーボードレス(必要なところは自分で弾いていた)。ギターがロン毛なので、あれ、ついに昼海クン復帰?と思ったけど、最後のロール・クレジットを見ると、違う人だった。今回のバンドが一時的なものなのかどうか、それはわからないけど、バンドといっても、誰もそう見てくれないから、3枚作ったことだし、ここらで仕切り直すという可能性高いような気もする。作曲家に専念したいみたいなこともずっと言っているし。
 ステージも一見シンプルでいてやたらと仕掛けが一杯で、飽きさせない。照明がすごく手が込んでいる。お色直しも何回もやったんだろう?もう、ライブDVDを出すこと前提で構成しているんだろうな(もらったチラシを見ると、やっぱり、3月に出すみたいです)。殆どMCは無しで、演出でつなぎながら曲をやっていくスタイル。MCの代わりに、これまでのキャリアを紹介するナレーションと、御子息(7歳)による子供時代の写真の紹介のナレーションがあって、ここが今回のハイライト。御子息、賢そう。朗読、しっかりしてる。それにしても、30歳にして、7歳の母か。ここまで良くやってきたなあ。

 最初はこうで、

セットは大体こんな感じだ。絵が下手でネタバレしてるのにネタバレにならない(涙)。
 入場するときに、旗とティッシュをおみやげにもらえる(笑)。邪魔にならないのが良い。
 アリーナの後方だったので見にくかったけど、まあ、十分楽しんだかなあ。

セットリスト

1. ハツコイ娼女
2. シドと白昼夢
3. ここでキスして。
4. 本能
5. ギャンブル

      • [ 林檎の筋 (BGM「宗教」) ]---

6. ギブス
7. 闇に降る雨
8. すべりだい
9. 浴室
10. 錯乱
11. 罪と罰
12. 歌舞伎町の女王
13. ブラックアウト

      • [ 林檎の芯 (BGM「やっつけ仕事)]---

14. 茎(STEM)
15. この世の限り
16. 玉葱のハッピーソング(w/椎名純平
17. 夢のあと
18. 積木遊び
19. 御祭騒ぎ
20. カリソメ乙女

          • [ アンコール ]-----

21. 正しい街
22. 幸福論-悦楽編-

          • [ Wアンコール ]-----

23. みかんのかわ(7歳の時に作った曲だそうだ!)
24. 新曲

      • [ Endroll (BGM「丸の内サディスティック」) ]---

 見所はいっぱいありすぎたのだけれど、キッチンが出てきて、リンゴを包丁で輪切りにするパフォーマンスが面白かった。椎名林檎には包丁がよく似合う。それを当人も良く自覚している。だから、やっている訳で、女の自意識って知性なんだなあ、と思った。男の自意識って、どうあがいても嫌みとか謙遜にしかならないけど、女の自意識ってすごいな、と。「この服、普通に着ると、地味だと言われるから、ああして、こうして」みたいなのって、考えてみると、すごいことやっているよなあ。人が自分に対して持っているイメージと、自分の自己認識やこう見せたい自分との間の距離感測って、それを服や振る舞いという表層で表現する、と男らしく理屈で言うとなることを、日々やっている訳だからなあ。「そういうこと考えないのが男だ」と言うことになっているので、男って、楽してるよな。
 観客も3/4くらい女性だったような気がする。男子は、「やっぱり椎名林檎は1枚目と2枚目がベストで、後は駄目、才能枯渇した」みたいな言い方になることが多い。東京事変含めてどれがベストか?と聞かれたら、私もやはりそう答えるけれど、その後に関しては、男子と女子では目線の違いがあるんじゃないのかな。結局、男子目線的には、「昔が良かった、女は若いのが一番」みたいな話で、女子目線的には「デキ婚して、離婚して、ずっと第一線でやってきて、カッコ良い!」みたいな距離感あるんじゃないのかな。典型的なオーディエンス像としては、アラ30の女子二人組という感じだったんじゃないのかな。青春まっただ中で、ガツンとぶつかって、その後、自分もOLになったりして、そろそろ結婚も考えたりするけど、自分が最初にガツンとやられたアーティストが、こうして時代や年月と渡り合いながら今の姿を見せてくれているのが嬉しいみたいな。そういう意味じゃ、これ、ユーミンなんだよね、一昔前の。
椎名林檎、10周年記念祭で5万5000人をノックアウト - 音楽ナタリー