「将棋の子」: 大崎善生

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

 読了。電車の中で涙が出そうになった。最近、「ハチワンダイバー」とか「3月のライオン」とか、将棋マンガ流行ってたので、ついでに読んでみたんだけど、泣けた。
 プロの棋士になるためには、21歳までに三段、26歳までに四段にならなければいけない。四段からは手当などがつく一人前のプロ。しかし、それまでは奨励会というところに属して、師匠について弟子になり修業をしなければならない。年齢制限に達してしまえば、奨励会を去らなければいけない。四段になるためには、数十人の中からリーグ戦で上位2人に残らなければいけない。殆どのものはここで将棋の世界を離れていく。そして、プロになっても、リーグ戦がランクごとにある。名人というのは、本当に高みなのだ。
 この小説、というか、ノンフィクションは、そうして奨励会を去って言った若者とその後の話。筆者は将棋連盟の雑誌の編集長を10年務めた。そこで見た若者たちの青春の葛藤、挫折、そこから立ち上がっていく姿が描かれる。
 四段になれなければ、毎日将棋のことだけを考えていたのが、20代半ばで中卒で社会に放り出されるんだから、悲惨だ。それでも、それを目指す。入門するまでは、地元で天才とか神童といわれていた奴ばかりの世界に飛び込んでみれば、自分の才能の限界に気づきやめていくものもいる。