「い〜じゃん!J-POP -だから僕は日本にやって来た」: マーティ・フリードマン

 読了。連休中に読んだ音楽本その2。元ヘビーメタルバンド「メガデス」のギタリスト、マーティ・フリードマン日経エンタメのHPに連載のJ−POP時評をまとめたもの。同じスタイルの音楽をずっとやらなければいけないのにうんざりしたころ、日本のファンにもらった日本のCDでJ−POPに目覚め、日本語もマスターし、バンドを脱退して日本にやってきたんだそうだ。正直、ヘビーメタルにも彼が好きな類のJ−POPにも興味ないのだけど、どうしてこうなるんだろうと不思議で仕方なかったので読んで見たが、面白かった。アメリカ人は思ったことを本当にしてしまうとこが、偉いというか怖いというか。
 要は、ヘビメタさんは永遠に同じスタイルを期待されるので、嫌になった、ということから始まっているみたいなんだけれど、まあ、あの世界だっていろいろな流派はあるけど、その範囲が狭すぎたし、ファンも同じことを繰り返すことを期待するのが欧米ということだろうか。そういう世界から見ると、突然ヘビメタ調のギターソロまではいってしまうJ−POPの無節操な世界がすごくうらやましかったんだそうだ。こういう見方ってあるのか、と驚いた。日本人的には、それってなんでも外国で流行っているものをパクっているから偉くも何ともないじゃないか、と言うことになるのだけれど、逆にプロの世界で長いことやってきた彼にしてみれば、多少のパクリは目クジラ立てることでもなく、むしろ、そのメチャクチャな組み合わせ方で新しいテイストを生み出していることの方が面白くて仕方ないし、そこのオリジナリティーの方がずっと重要だということになる。
 もっとも、アメリカ人がみんな彼と同じような反応をするわけではないようだ(そりゃそうだ)。じゃあ、何故彼はこんなにはまってしまったんだろう。その原因は、やっぱり、彼のバックグラウンドのヘビメタと意外に通じるところにあるんじゃないだろうか。ヘビメタもやはり様式が確立している音楽だ。だから、その様式の中でどうやって差異化するものを作っていくか?というゲーム的な世界になってくる。
 彼のJ−POP評は、さすがにミュージシャンなので、曲の構造を丁寧に分かりやすく分析している。日本の音楽評論家って、別に音楽を音楽的に分析して評論しているわけではなくて、感想言っているだけだけど、海外の人が書いたものはそれなりに書いているものもあると思うけど、さすがにミュージシャンなので曲の分析の切り口が面白い。ただ、そういうテクニカルな切り口って、やっぱりゲームっぽい。そういう意味では、意外と、彼自身の中では矛盾がないのかもしれない。チェスに飽きたころに、敵から取ったコマまで使える無節操な将棋にはまってしまったという感じなのかもしれない。
 「ドラッグを肯定してアメリカをダメにしたから、ビートルズは嫌いだ」とか、ピンと来ないこともいろいろ言っているとは思うけど、とにかく新鮮なものの見方で面白かった。でも、単なるモー娘オタなのかも。


マーティ・フリードマンのJ−POPベスト10

1位 華原朋美 "I'm Proud"
2位 平原綾香 "明日"
3位 三人祭 "チュッ!夏パ〜ティ"
4位 松浦亜弥 "ね〜え?"
5位 相川七瀬 "Schock of Love"
6位 中島美嘉 "雪の華"
7位 松浦亜弥 "Yeah!めっちゃホリディ"
8位 Ruby Gloom "My Treasure"
9位 倉木麻衣 "Silent love ~ Open My Heart"
10位 松浦亜弥 "桃色片想い"