『ランジェ公爵夫人』:監督ジャック・リベット

ランジェ公爵夫人(2007)
NE TOUCHEZ PAS LA HACHE
LA DUCHESSA DI LANGEAIS
DON'T TOUCH THE AXE
上映時間 137分
監督: ジャック・リヴェット
製作: モーリス・タンシャン、マルティーヌ・マリニャック、ルイジ・ムジーニ、ロベルト・チクット、エルマンノ・オルミ
原作: オノレ・ド・バルザックランジェ公爵夫人
脚本: パスカル・ボニゼール、クリスティーヌ・ローラン、ジャック・リヴェット
撮影: ウィリアム・リュプチャンスキー
美術: マニュ・ド・ショヴィニ
衣装: マイラ・ラマダン・レヴィ
音楽: ピエール・アリオ
出演: ジャンヌ・バリバール アントワネット・ド・ランジェ公爵夫人
ギョーム・ドパルデュー アルマン・モンリヴォー将軍
ビュル・オジエ ブラモン=ショーヴリ妃
ミシェル・ピッコリ ヴィダム・ド・パミエ
 19世紀初頭のパリ。社交界の華、ランジェ公爵夫人は、舞踏会でナポレオン軍の英雄モンリヴォー将軍と出会う。いまや時の人となったモンリヴォー将軍に興味を抱いたランジェ公爵夫人は、彼を自宅に招き冒険譚を語らせる。あっという間にランジェ公爵夫人の魅力に心奪われてしまったモンリヴォー将軍だったが、ランジェ公爵夫人の思わせぶりな振る舞いに翻弄され続けることに。業を煮やしたモンリヴォー将軍は、彼女を誘拐するという強引な手段に打って出る。思いがけずこれがランジェ公爵夫人の心に火をつける。一転して立場は入れ替わり、モンリヴォー将軍を熱烈に求め始めるランジェ公爵夫人だったが…。

 リュプチャンスキーの撮影に涙。照明もカメラも相変わらずスゴイ。たぶん、これをテレビで見たら、フィルムの質感が再現できなくて腹が立つと思う。暗いところとか、明暗がきついところとか、プラズマでも階調出しきれないんじゃないか。多分、液晶だとこういう絵は無理じゃないか。でも、コントラストはきりっとしたトーンなので、そこは逆にプラズマでは無理だろうな。この人が撮影した映画はやはり映画館で見ないといけない。
 まず、ジャンヌ・バリバールが素晴らしい。知的で気高くて謎めいていて、リヴェットの映画にはぴったり。ギョーム・ドパルデューもすごい俳優になったなあ。足を引きずっているけど、偽足なんだ、この人。それから、ちょい役だけど、ミッシェル・ピコリとビュル・オジェが泣かせる。
 それにしても、すごい話だな、これ。将軍を誘惑してみたら、将軍の方が本気になっちゃって、それをああでもないこうでもないと肝心の一線は拒否し続けたら、将軍逆ギレして、公爵夫人を誘拐して、焼きごてで額に星形を付けてやると脅したら、公爵夫人人格ぼろっと崩れてひざまずいてしまい、「焼きごて( ゚д゚)ホスィ…、あなたの家畜キボンヌ」となってしまい、将軍は呆れきって、公爵夫人を解放。今度は将軍が逆につれなくしたら、公爵夫人の方が将軍を追いかけはじめてというツンデレ合戦。ツンデレvsツンデレbyバルザック。まあ、ゲームとしての恋愛って、そういうものかも。恋愛はツンデレだ。まあ、昔の地位もあるやんごとなき人たちにしてみれば、一歩モラルの外に外れちゃうことで燃えてしまう、たがが外れたところから始めて真実の愛が、なんていうのもありだったんでしょうか。
 「美しき諍い女」以降、予算も付くようになったのか、美術も結構豪華に見える。とにかく、あのちょっと薄暗くてごちゃごちゃとやたらものがある感じ、つまり静物画なんだけど。まあ、これを一から作るほどのお金はある訳ないので、それだけ工夫しているということなんだろうけど。衣装もすごく良い。女の子ならあれ見ているだけで楽しめるでしょうね。19世紀のコスプレなのに、今の目線で見ても十分に行けてるんじゃないだろうか。
 久しぶりに、新作の映画で感性を刺激された。

ランジェ公爵夫人

ランジェ公爵夫人

http://www.cetera.co.jp/Lange/
http://www.excite.co.jp/News/entertainment/20080416070500/Variety_20080416004.html
Variety Japan
 そんなに人入っていなかったけど、がらがらでもなかったな。