「セバスチャン」: 松浦 理英子

セバスチャン (河出文庫)

セバスチャン (河出文庫)

 読了。
 1981年発表の作品だけど、生硬なところはあるけれど、本質的な強度がそのまま突き刺さってくる。
 大学を2年で中退してイラストを生業としてくらす主人公の亜希子は元同級生の背理と精神的にマゾヒスティックな依存関係(これは同性愛的、と言えるんだろうか)にある。そこにびっこの年下の青年が現れる。彼もまたマゾヒスティックな性向の持ち主で、・・。
 微妙すぎて、こんな話のあらすじなんて書ける訳ないのでやめた。やっぱりスゴイ。何がスゴイか。
 その1。終わらせ方。終わらせ方と書いたけど、これは一番厳しい終わらせ方で、その手を最後にたたみこむように打ってみせたところ。
 その2。エロスをエロスのかけらもなく書いていながら、理屈っぽいようで理屈で書いてないところ。
 まあ、とにかく簡単に面白いとか言えない厄介な小説だなあ。それはすごく面白いことだと思う。