「日本侠客伝 花と竜」@NFC

112分・35mm・カラー
'69(東映)(原)火野葦平(脚)棚田吾郎(撮)飯村雅彦(美)藤田博(音)木下忠司(出)郄倉健、若山富三郎藤純子、星由里子、二谷英明津川雅彦、山本麟一、水島道太郎、小松方正、郄橋とよ

 上映後、マキノ佐代子氏(マキノ雅広監督長女)、山根貞男氏のトーク・ショー。

 撮影所の所長に呼ばれて、「マキノ先生の娘は藤純子以上でなくてはあかんのや!」と言われました。

 それはないだろう!でも、

 私たちは、父が黄色が好きな色なので、父に黄色い色の物を買ってきたりするんですけど、純子さんは自分が黄色の服を着て来るんです!

というのは、参ったね。さすが、マキノ雅広監督、大女優を育てたなあ。。。そういうセンスって、やっぱり大切だよなあ。でなきゃ、映画を撮るときだけ思い通りなんて訳にはいかない。でも、娘を育てるのと女優を育てること。それは、やっぱり違うよなあ。
 あれほど女優を育てることにかけては神様のような人が、家庭で自分の娘に対してはどうだったのか?というのは、みんな興味のある話だろう。それが、家では殆ど何にもしてくれなかった、というのが、なんだか、それはそれで、らしいなあ、とも思う。でも、娘が始めて出演する映画には、自分も端役で顔を出すんだから、やっぱり良いとこあるよな。とは言っても、娘との記者会見で一人で全部しゃべりっぱなしだったというのだから、まあこの辺、よくわからない。生涯にあれだけの映画を撮ったら、家族サービスなんてしている暇はなかったんだろうなあ。食卓でも、話に箸を振り回して身ぶりが入る、というのが、なるほどなあ、と興味深かった。
 監督の80歳のお祝いのときに作った「マキノ組」のハッピを着て登場されたのだが、観客席の中に澤井信一郎監督がいるのを知ると、かなりマジで「私にはこれを着る資格がない、と後で怒られる、澤井先生は怖いから、怒られる」と、何度も観客を盾にとって予防線を張っていたのが、可笑しかった。「今日はお彼岸ですから」と、山根氏もフォローしていた。
 映画の方は、日露戦争後の九州の炭鉱港で石炭を船に積み込む荷上げ仕事を生業とする権造と言う設定。ヒロイン2人のいかにも九州女らしい描き方がやはり見どころ。いざとなると、何も言わずに新しい着物を出してくるところとか、壺振りの姉さんもちょっと顔を背けて話を聞くとことか、さすが、こういう女の芝居をつけるとこは、もうたまらん。それに比べると、男の役者にはそういうことは絶対やらなかったんだろうな、殺陣以外は。逆に言えば、「すんません」と頭を下げるだけで絵になる男しか使わなかった、ということだ。
 あと、やっぱり、あの、その他大勢というのが、やっぱり良いんだよな、マキノ的で。あれを見てると、一緒に「そうだ、そうだ」って、巻き込まれちゃうんだよな。