「アズ・アイ・アム」: アリシア・キーズ

 ついに出たアリシアの3枚目。これは傑作だと思う。当人が「Janis Jopplin meets Aretha Franklin」だ、なんてすごいことを言っているらしいけど、確かにこれはそのくらいの手ごたえを感じたということなんだろうな。
 天は二物を与えずなんて大嘘だな、と、この人を見るたびに思う。美貌、作曲能力、歌手、ピアノプレーヤーとして、完璧な完成度でいきなり登場したんだから。その上、コロンビア大飛び級で入って中退、っていうんだから。ただ、そこの優等生的なイメージというのから、なんか一歩か半歩、踏み出したのかなあ、という気が何となくする。女になったというか、なんというか(笑)。
 それは具体的には、声がちょっとはスキーになったようなところなのかな。声を痛めたのか、歌い方を変えたのか、ちょっと分からないけど。シングル曲の"No One"なんか、そういうところが顕著で、たしかにちょっと"J.J. meete A.F."という感じはある。でも、この曲ロックっぽいし、なんか、U2っぽいような気もする。
 そう考えると、メアリー・J・ブライジも、U2カバーしてるし、あの歌い方もソウルというよりロックっぽいような気がする。何がロックっぽいかというと、結局、自分を作品で表現しようという姿勢みたいなところなんじゃないんだろうか。音楽的にこの曲はこう歌うべき、みたいなものより、こう歌いたいからこう歌うみたいな。ジャニスというのはその辺のことなんだろうなあ。
 このCDの帯にもクラシック、ジャズ、ソウル、ロックみたいな要素がここには含まれているというようなこと書いてあって、まあ、それはそういうとこあるけど、ジャンル的にどうであれ彼女流の流麗な音楽になっているのがすばらしい。その流麗さが1枚目や2枚目は繊細さになっていたんだけど、今回はそこに力強さが加わったという感じ。