「連合赤軍「あさま山荘」事件」: 佐々 淳行

連合赤軍「あさま山荘」事件

連合赤軍「あさま山荘」事件

 読了。「あさま山荘」事件に関する警察側のドキュメント。
 この本を読んでいると、当時の警察側の苦労や大変さが偲ばれる。何と言っても、警察官になるというのは、まず、職業である。生業である。でも、これを読んでいると、やはり、あの頃は、士気も高かったし、仕事とは言っても、やはり、この仕事を選択する以上は思想的選択だったのだと思う。著者の子供が学校で日教組の教師に「父親が自衛官か警官の人は立ちなさい!あなた達のお父さんは悪い人です!」と、廊下に立たされた、という無茶苦茶な話が出てきて唖然としたが、まあ、今じゃ、別の意味でほんとに悪い人ばかりなんじゃないだろうか、と思いたくなる時代になってしまった。
 もうあれだけ昔の事件だと、何故こういう事件が起こったのか?という話よりも、何があったのか?という戦記的な話になるのだろうか。
 こうして警察側からのドキュメンタリーを読んでいても、全く犯人側の話が出てこない。警察へ人質を盾にとった要求をするわけでもないし、姿を見せる訳でもない。時たま銃を撃って来るだけで、人質の安否も分からない。中で何が起こっているのか分からないという状況が延々と続いていたことが、この本を読むと良く分かる。その不気味さは、この本でも述べられているように、すでに14人のメンバーを「総括」の名の下にリンチで殺していたことに起因するのだろう。
 映画を見ると良く分かったけど、あさま山荘事件は外から見れば事件がそこで始まったように見えるけれど、連合赤軍内部では凄惨なリンチが続き、脱走者も続出し、極限状態を超えた崩壊寸前の状態で追い詰められた結果、逃走の果てに浅間山荘事件に至った訳だ。