「スパイのためのハンドブック」: ウォルフガング・ロッツ

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)

 読了。佐藤優氏の推薦本。ウォルフガング・ロッツはイスラエルモサドのスパイで云々は、ここに良く書いてある。
 1921年にドイツで生まれ、母親がユダヤ人であったためイギリスに移住し、第二次大戦ではイギリス軍に参加、戦後イスラエルに移りイスラエル軍に勤める。モサドからスカウトされ、エジプトでスパイ活動を行う。エジプトでは金満家のドイツ人になりすまし、社交界に名をはせる。大きな功績を挙げるも、スパイであることが発覚し、投獄。5000人のエジプト人捕虜との交換で釈放される。その後、過去のスパイ活動を書いた「シャンペン・スパイ」が世界的ベストセラーになり、これはその彼の2冊目の本である。自己の体験に基づき、スパイとしての適正検査からスパイになるための方法、訓練、心得から、投獄時や引退後のアドバイスまでが、「シャンペン・スパイ」ならではの気の利いた筆致で書かれている。
 妻とのロマンスの件は、「なんか、できすぎてるんじゃないの〜」と思ったけど、やっぱりねえ。「大きな嘘には小さな真実を混ぜよ」という章のタイトルをそのままに実行した訳なんだろうな。この本の最後の一節はどうなんだろうな?

 助言を提供するという私の当面の仕事をしめくくるにあたり、引退したスパイは以下の助言に留意してはいかがであろう。
...
6 愚かな利殖を企て、すっからかんになったら、もう一冊、たぶんスパイ志願者のための手引書を書く。

これが小さな真実なのかもしれない。彼自身の実際のスパイとしての腕前はともかく、この本はなかなか楽しめた。