新教養主義宣言: 山形 浩生

新教養主義宣言 (河出文庫)

新教養主義宣言 (河出文庫)

 読了。まとめて読むと、この人の成分が何となく分かったような気がして面白かった。世代やらなんやら色々被るところが多いから、よく分かるという部分と、近親憎悪的な反応したくなるところがある(笑)。きっと、どこかですれ違っていたんだろうな。それにしても、この人のベースはやっぱりSFなんだな。経済の話にしても、なんにしても、SF的な感覚で扱っているのかも。必ずしも悪い意味じゃないけど、必ずしも良い意味でもないけど。「なんで、この面白さがあんたたちには分からないんだ?!」という橋本治的な怒りはよく分かる。この本が出た1999年には、まだ自分もそんな気持ちがあったかもしれない。でも、そう簡単に分からないことの面白さとか、そんなに簡単に言えない面白さとか、そういうものの方が本当は面白いんだ、と今は思うようになったなあ、と、これを定規として過去の自分を振り返りながら読んでいて思った。
 それにしても、山岸涼子の『日出処の天子』を連載開始時の10回くらいしか読んでいなかったくせに、コインランドリーに全巻あるのを見つけて持って帰って全部初めて読んで、10年前にこれを読んでいた人は今どうしているんだ、なんて、勝手なこと言って、挙句に自分で名文だ、とか書くなよなあ。そんなの10年前にちゃんと読んでいろ、っつうの。とこの文章が文庫になってから言うのもなんだが。
 この人、張ったりだけではないけど、言っていることは脇甘い。それほど強固な信念持って言っているわけでもなかったりする。むしろ、これで活字にしちゃう感覚というのが、ゆるくて新鮮だったのかもしれない。ブログみたいな感覚で活字媒体にもの書いていた、という感じだな。