「先生とわたし」:四方田犬彦@新潮 3月号

 四方田氏が恩師である由良君美について、かなり個人的な話まで書いている。ネタとしてはゴシップの範疇に属するような所まで赤裸々に語っているのだけれど、色々考えさせられる。由良君美氏と言えば、幻想文学関連でも有名な博学な英文学者なのだが、晩年はかなり酒乱気味であったらしい。この世代には結構いた海外に行ったことのない英文学者であった氏が、海外を飛び回る弟子に置いていかれたような思いを持ってしまったのが亀裂の原因と言うことらしい。その師の心情を推し量れなかった自分を責めてやりきれない思いを吐露している。非常に痛ましい話なのだが、ついついゴシップ的に読んでしまった。そこを書かないと、この話は書けないと言う話だし、恨みがましい感情は全く四方田氏側にはなく、何故、自分が一方的に破門状態にされてしまったのだろう?という疑問に端を発している。
 自分を乗り越える弟子を育てたことを素直に喜べないだけの真剣さが自分にあるだろうか?と自問するのが結論なのだけれど、こういう濃い師弟関係って、世の中から本当に無くなってきているよなあ。師弟関係だけじゃないけど。

セルロイド・ロマンティシズム

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みみずく古本市 (1984年)

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影の獄にて (1982年)

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世界のオカルト文学・幻想文学・総解説 決定版

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読書狂言綺語抄(どくしょきょうげんきごしょう)

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メタフィクションと脱構築

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みみずく偏書記 (1983年)

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椿説泰西浪曼派文学談義 (1983年)

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