鈴木先生(1): 武富健治
- 作者: 武富健治
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/08/11
- メディア: コミック
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感じやすい人間であれ、しかし、賢明な人間であれ。単にこの両者のどちらかであるなら、君は何の価値もない人間だ。(ジャン・ジャック・ルソー『エミール』)
表紙裏より。
『@げりみそ』は、優等生が給食中に突然「げりみそ」と喚きだすが、鈴木先生はその謎を解明しなければならなくなる。『@酢豚』は、給食のメニューから酢豚を外すのに反対する生徒の声を、鈴木先生は取り上げ、全校アンケートをするのだが、・・・。『@教育的指導』は、性教育のあり方をめぐる話。
中学生日記の世界なのだが、それにオロオロ対応する鈴木先生が良いのだ。鈴木先生は、金八先生や夜回り先生みたいに、バシーン!とかましてくれる訳じゃない。実は、生徒にムラムラして悩んでしまったりするし、なんか頼りないといえば頼りないけど、生徒がそうするしかないということを理解しようとする。大人の理屈というのは、実は理屈じゃなくて、「駄目だから駄目」というただの規則でしかない。法律なら罰だってあるけど、学校の中のルールなんて実は根拠がなかったりする。先生の作るルールの正当性を保証する基盤なんてたいしてない。立法機関と行政府と司法を小さな世界で一手に握っているようなものだ。自分たちとは違う高さの目線で世界を見ている生徒たちとどうやって付き合っていけば良いのか。
軟弱な文化部っぽい鈴木先生が、決断にまで至る考え方というのが、すごく論理的で現実的で面白い。これまでの学園ものの先生って、大人としてのリーダーシップみたいなところに権力基盤があったんだけど、その嘘臭さがあった。鈴木先生のリアリティは、子供の世界も大人の世界も同じ目線で考えるところだと思う。実際、先生同士の人間関係もストレスたまりそうだし。やっぱり、なんだか、こうして本音をぶつけると、2ちゃんねる的になるんだけど、良スレという感じ。2巻が楽しみ。
なんて書いていたら、今日の「ほぼ日刊イトイ新聞」のメルマガにこんな投稿が。
教員の休職者7000人超という報道を見たとき、
「そんなもんじゃないだろうなぁ……」
というのが正直な感想でした。
あくまでも正式に休職した人の数がそれで
精神的に疲れながら綱渡りのようにすごす人や、
退職していく人、疲れはてて、自殺する人……
地方都市の私の周囲にも、実際にそういう人がいます。
「ロリコンだから教師になった」なんてのたまう教師もいるこの時代。真面目にやっている先生ほど大変だと思う。こういう「ほぼ日刊イトイ新聞」の癒しの一方で、2ちゃんねるもみんな読んでいて、それでバランスが取れているというのが良いのかなあ。