「ウェブ人間論」: 梅田望夫, 平野啓一郎 を読む(3)

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

 第四章 人間はどう「進化」するのか
  ブログで自分を発見する
  「島宇宙」化していく
  ネットで居場所が見つかる
  頭はどんどん良くなる
  情報は「流しそうめん」に
  ウェブ時代の教養とは
  魅力ある人間とは
  テクノロジーが人間に変容を迫る
  一九七五年以降に生まれた人たち
  百年先を変える新しい思想

 なんだか、あんまり悪口ばかり言ってもなあ、と、この本に関してはそういう積もりで書いているのだが、やっぱり押さえきれないくらいつっこみどころがありすぎる。

平野 ……… それが、今はアマゾンの紹介を通じて、そう言う過程を経ずに一気にアレントにジャンプできちゃう。(175頁)

 爆笑。いきなりアマゾンのお薦めでハンナ・アレントの本にたどり着くって、一体どうすれば出来るんだろう?!そう言うことを言いたいんじゃないんだ、そこで突っ込むんじゃない、言いたいことは分かるだろう?と言われても、これはありえない〜。アマゾンで本を買ったり、ある程度実際に自分で使っていたら、こういうこと絶対言えないと思うのだが。
 こうした平野氏の発言読んでいて思うのは、90年代って小説自体より評論の方が面白かったんだよな、ということ。みんな御勉強して小説書かなきゃいけないと思うようになってしまった。御勉強するのは良いんだけれど、それが切れば流れでてくる血のような思想じゃなくて、流行の服のようなモードとしての「思想」みたいなものになってしまった。それを消化して訳の分からないものとしてはき出すような怪物は、中上健次で終わってしまったんだろうな。生命力の強い村上龍は、それでも吐瀉物のようにして何かを時々放出してみたりするけれど。だったら、小説なんか書いてないで、学者やれば良いんだよね。
 若さの野心と言ってしまえば、それまでだけれど、若さの野心はあっても感性は年寄りってさあ、ちょっとねえ。みんな、ブログを何で書いているのか?なんて発言もあったけれど、それはそれで重要な問題だとは思うのだが、逆に「あなたは何故小説を書いているんですか?」と聞いてみたい気もするんだけど、本当に聞くとつまらない話を延々と聞かされそうなので聞きたくないなあ、と思ってしまう。
 後書きを読んでも、梅田氏もかなりの違和感を覚えているような気がする。本音では色々思うところもあるのかもしれないが、訳の分からない失敗作を作るというのも重要なことだと思う。そういうキャパシティがないと、枯れちゃうから。以前にソニー・ミュージックの元社長の丸山さんが「この業界では、自分より若い奴とつきあっていないと死ぬ」みたいなこと言っていたけれど、これって重要なことだと思う。でも、それが平野氏だと、………。まあ、いいや。
 Star Warsの話をしようと思ったけれど、これはまた後ですることにしよう。明日は朝早いし。