『今日までそして明日から』:和田アキ子

今日までそして明日から

今日までそして明日から

1. あの日にかえりたい
作詞・作曲:荒井由実/編曲:野崎良太(Jazztronik) (オリジナル・アーティスト:荒井由実
2. 風をあつめて
作詞:松本隆/作曲:細野晴臣/編曲:小西康陽 (オリジナル・アーティスト:はっぴいえんど
3. 春夏秋冬
作詞・作曲:泉谷しげる/編曲:朝本浩文 (オリジナル・アーティスト:泉谷しげる
4. タイムマシンにおねがい
作詞:松山猛/作曲:加藤和彦/編曲:小西康陽 (オリジナル・アーティスト:サディスティック・ミカ・バンド
5. 今日までそして明日から
作詞・作曲:吉田拓郎/編曲:白井良明 (オリジナル・アーティスト:吉田拓郎
6. 雨あがりの夜空に
作詞・作曲:忌野清志郎仲井戸麗市/編曲:小西康陽 (オリジナル・アーティスト:RCサクセション
7. 情熱の薔薇
作詞・作曲:甲本ヒロト/編曲:窪田晴男 (オリジナル・アーティスト:ブルー・ハーツ)
8. スカンピン
作詞・作曲:鈴木慶一/編曲:白井良明 (オリジナル・アーティスト:鈴木慶一とムーン・ライダーズ)
9. バラとワイン
作詞・作曲:木暮武彦/編曲:CHOKKAKU (オリジナル・アーティスト:レッド・ウォーリアーズ)
10. LET'S DANCE BABY
作詞:吉岡治/作曲:山下達郎/編曲:野崎良太(Jazztronik) (オリジナル・アーティスト:山下達郎
11. 悩み多き者よ
作詞・作曲:斉藤哲夫/編曲:白井良明 (オリジナル・アーティスト:斉藤哲夫

 楽しみにしていた和田アキ子のカバーアルバムが出た。例によって、オシャレアレンジとダイナマイトなアッコさんのボーカルという路線で、このきら星のような名曲が!余りに名曲ばかりじゃないか、と言う気もするけれど。それにしても、元々女性が歌っていた曲が1曲目のユーミンだけというのが、さすが(笑)。『あの日にかえりたい』って、こうして聞くと実は結構ムード歌謡的な曲だったんだなあ、というのが見えてきて面白い。
 アッコさんのパワフルなボーカルを堪能したいのに、むしろこういう選曲だと、オシャレアレンジがジャマかなあ、と言う曲もないではない。『タイムマシンにおねがい』とか『雨あがりの夜空に』なんか、ちょっとそんな感じで、イマイチ乗り切れて無くて、もっとガーンと直球でロックンロールして欲しかったなあ。もっと行けると思うんだけどな。というのも、ギターガンガン鳴っている『情熱の薔薇』がすごく良いから。つまり、小西康陽のアレンジが良くない。これまでの和田アキ子のオシャレリメイクは良かったと思うんだけど、この選曲をこの人がやるのが間違い。でも、『風をあつめて』はまあまあの出来かな。『スカンピン』って良い曲だなあ。
 こうして通して聴いて思うのは、日本のフォーク〜ニューミュージック〜J−POPって、私小説的、というか属人的だったのだなあ、ということ。あまり日本人が日本人の曲のカバーをやるというのがなかったので、この曲はこの人の歌、作った人の歌、と曲が人とべったりと一体になってしまっていたんじゃないだろうか。本当に良い曲は別の人がやれば別の魅力が発見される。自分の歌いたい歌を作るというシンガーソングライターというスタイルとは別に、シンガーとして曲に命を吹き込むという歌謡曲の世界の人が歌うとこうなるという面白さがある。作曲した人の個性を離れて、曲自体の良さがそのまま見えてきて新鮮な感じがする曲も多い。『悩み多き者よ』とか『今日までそして明日から』なんて、すごく説得力あるよなあ。シンガーソングライターによるフォークソングの一人称の自己主張が、ボーカリストによる歌謡曲の三人称の物語に変換されるとこうなるのか、という面白さ。