「かわいい」論: 四方田犬彦

「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

 読了。「かわいい」と言う概念が日本で発生したのは、要するに、日本が子供文化の国だからだという辺りは全く同感。アメリカやヨーロッパのエンターテイメントは、家族向けか大人向け、さもなくばお子ちゃま向けで、その間って実はないんだよね。中学生や高校生が自分たちのものと思って真剣にのめり込める文化的なものって実はあまり無い。漫画雑誌とか10代向けのファッション雑誌なんて無いんじゃないのかな?それが良いことなのか、悪いことなのか、というのは、よく分からないけど。
 アキバ周りする辺りから、四方田先生にしては珍しく、力尽きた、というか、げんなりしてしまった、と言うか、こんなことを書いても現役のオタクは読んでくれないだろうし、いくらでもこれ書いてくれる奴はいるだろう、という感じになっているのが、むしろ、「かわいい」といっても良いのかな?オタク文化恐るべきと言うべきか?
 あと、ヘンリー・ダーガーの話が興味深かった。これとセーラームーンを結びつけて論じるというのがさすが。
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

darger

1973年、シカゴ。身寄りのない81歳の老人が息を引き取った。彼が40年来住んでいたアパートの部屋には訪ねてくる人もいなかったという。アパートの大家は、老人の遺品を処分しようと、この雑然とした部屋に足を踏み入れ、大変なものを発見する。タイプライターで清書された1万5145ページの戦争物語『非現実の王国で』とそのために描かれた300余点の大判の挿絵だった。