「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」
Eli, Eli, Lema Sabachthani?
「神よ、何ゆえに我を見捨てたもうや」
主イエスが十字架に張り付けられながら唱えた最期の言葉
(マタイ27章 46節)
「エリエリレバニライタメ」を見てきた、と言っても大体通じるのではないだろうか、この難しいタイトル。どうしても覚えられない。
世紀末的な世界観の映画を新世紀に遅れて出してくる辺りが、何となく青山真治っぽい。題材としては、何だかクロサワっぽい話のような気もするし、ウイルスが地球を危機に陥れて音楽が世界を救うのか?って浦沢直樹の「20世紀少年」そのままじゃないか!とか、「自殺したいって何が悪いの?」というのは「ユリイカ」の変奏だなあ、とか、ノイズミュージックだと言ってもあれなら本物の猿に演奏させた方が凄そうだ、とか思うけど、そういう皮相的なところは、どうでもよろしい。青山真治って、余りに繊細そうで、悪口言ってはいけないような気にさせられる。
まず、このロケーションが釧路らしいけど、とても日本とは思えない。地平線まで広がる野原、生命を感じさせない砂丘、曲がりくねった道をまとわりつかせた丘陵。一瞬、ヨーロッパかどこかで海外ロケしたのだろうか?と思った。
そして、カメラ、冒頭の音楽。役者。
浅野クンは、しゃべらなくともそこにいるだけで語ってくれるので、このセリフの少ない映画に不可欠。でも、そんなに頼ってしまって良いのか?と言う気もする。中原昌也は、評論家が役者をいざやると、ああだこうだ言えなくなっていてるみたいで(馬鹿たれ、そういう役なんだ!とは思うが)、面白かった。宮崎あおいちゃん、相変わらずロリロリ。この子は何となく小動物、それも生きているのより二次元の小動物っぽい。筒井康隆、もう名優という雰囲気。昔から舞台とか役者もやっていたけれど、あのぴらぴらとした二重のマントを着こなせる存在感と重量感、躁鬱の雰囲気を漂わせるあの姿は、圧巻。その筒井康隆と張り合う存在感が、岡田茉莉子様。あのペンションはシチューしかメニュー無いのか?でも、本当に料理旨そう。何だか、本気を出すと、凄く手の込んだ凄い料理を作りそうな雰囲気がある。
それにしても、青山真治、ペンション好きだなあ。「レイクサイド・マーダー・ケース」もペンションだった。「月の砂漠」の田舎の一軒家も普段から生活してた場所じゃないから、ペンションみたいなものだし。そういうペンションに合う音楽というと、「月の砂漠」の出だしのBeach Boysの"Caroline, No"とか、Jack Johnsonみたいなリラックスした音楽が本当は好きなんだろうけれど、何故かこの人爆音好きなんだよな。いまさら、スログリでもないと思うけど。多分、音楽として好きなのではなくて、薄暗いところで爆音を出している雰囲気と、頭を朦朧とさせることと、それについてうだうだ屁理屈をこねる暗い仲間内の雰囲気が心地良いだけなんではと言う気もする。そこの矛盾がここの映画では一つになっていて、正直だなあ、この人は、と思わされてしまう。音楽は冒頭のジャズだけすごく良かった。あの冒頭から、「なんだ、このカメラ!」とぶったまげたけれど、今回もカメラはたむらまさき大先生。特に、ロングショットが凄いです。
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もう1回見に行きたいなあ。テアトル新宿も、良くあの音量でやってくれたなあ。多分、今東京で一番良心的な映画館なのでは。あそこは偉い。喫煙スペースが館内にないのだけ玉に瑕だが。
- アーティスト: サントラ,長嶌寛幸,中原昌也,浅野忠信
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2005年/日本/カラー/107分 配給:ファントム・フィルム
スタッフ
監督/脚本:青山真治
プロデューサー:仙頭武則
撮影:たむらまさき
照明:中村裕樹
録音:菊池信之
音楽:長嶌寛幸
美術:清水剛
メイキングディレクション:阿部和重
ライヴ演奏/浅野忠信、中原昌也
キャスト
浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、戸田昌宏
鶴見辰吾、エリカ、内田春菊、眞野裕子、杉山彦々
古賀俊輔、斉藤陽一郎、川津祐介、岡田茉莉子
- 作者: 青山真治,中原昌也,阿部和重
- 出版社/メーカー: リトルモア
- 発売日: 2004/06/01
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