ランド・オブ・プレンティー

上映時間 124 分
製作国 アメリカ/ドイツ
公開情報 アスミック・エース
初公開年月 2005/10/22
監督: ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
原案: ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders、 スコット・デリクソン Scott Derrickson
脚本: ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders、 マイケル・メレディス Michael Meredith
撮影: フランツ・ラスティグ Franz Lustig
音楽: トム&ナクト Thom & Nackt
  出演: ミシェル・ウィリアムズ Michelle Williams ラナ
ジョン・ディール John Diehl ポール
ウェンデル・ピアース Wendell Pierce ヘンリー
リチャード・エドソン Richard Edson ジミー
バート・ヤング Burt Young シャーマン
ショーン・トーブ Shaun Toub ハッサン

公式HP:南アフリカランドでFX

 ミッシェル・ウイリアムスが可愛い。擦れる前のジュリエット・ビノシュを性格良くしたような感じ。別にビノシュになんの恨みもないし、嫌いじゃないけど。予告編でリチャード・ギアと出ている映画の予告編やってたからという訳でもないが。でも、男を踏み台にして大女優の道歩んでるなぁ。
 でも、これはやはりあのオジサン(ジョン・ディール)の怪演が見どころだ。ベトナム帰りで未だにイカレているって、まだそんな奴いるのかとすぐ思ってしまうが、そういうのって一生直らないんだから、そりゃいるかもしれない。アメリカ版奥崎 謙三というか、「ゆきゆきて米軍」というか、なかなかカルトがかっている。でも、劇画化しすぎのような気もする。最後に心に残るのは、このオジサンのドンキホーテ張りの大騒ぎよりも、アフリカでの体験を語るラナの一言だったりする訳だから。
 そういえば、冒頭の辺りで"New Million Dollers Hotel"という看板が屋上のシーンであったのにちゃんと気がついたので、せっかくだから自慢しとこう。
 最近のヴェンダースのつまらなさというか、嫌らしさって、U2と言うか、ボノそっくりだなあ。全部つまらないとも、全部嫌らしいとも思わないし、面白いところも良いところもあるんだけど、やっぱりそういう部分があって微妙に引っかかって手放しで良いとか悪いとか言う気になれない。要は良心や人権と言った正面から問われれば否定できないものを持ちだしてしまうところ。
 目の前に死にそうな人や腹を空かした子供がいて手をさしのべないと言うのは非人道的だし、そりゃひどいと思う。安易な援助は、結局、中間で搾取されたり、どうかすれば軍隊の私腹を肥やすだけになってしまうから、むしろ自立を助けるべきなのだ、というホワイト・バンドの言うことももっともだと思う。それは最も多くの人間を助けることを考えるべき政治的な立場からの意見としては正しいと思う。でも、そんなお利口な考え方をする人間の作る歌や音楽に感動できるか?と言われれば、あんまり感動できないんだよね。何の問題の解決にもならないと思うが、問題の解決の為にはムダかもしれないが、目の前の人に手をさしのべてしまう、というそういう行為の方がやはり人の心を動かすんだと思うし。芸術家が、そんなにお利口になって良いのか?というのも古典的なステレオタイプを求める古い感性ではあるんだけど。でも、何にもならないんだろうけど。と、こういうお気楽なことを言っている私のようなお気楽な日本人が、一番問題かもしれないけれど。
 あのオジサンの大騒ぎが本物のテロの発見になんか結びつかないんだろうなあ、というのは最初からわかってしまうし、一時の低迷期から比べるとずっと良いんだけれど、『パリ・テキサス』と余りによく似ている様な気もするし、そう思うと、物足りないなあ、と言いたくなる。ビデオカメラで撮ったのか、画像も粗い様な気もする。
 それにしても、これを見ていて、ドイツ人がアメリカで撮った映画という感覚はないなあ。国際化とかアメリカナイズの挙げ句、アメリカというのはアメリカにいる人の場所というだけになってしまっていて、むしろ、一番アイデンティティーがわからなくなっているのは、あのオジサンのようなWASPかもしれない。
 とは言えど、携帯の待ち受けが『星条旗よ、永遠に』というのなんか、もう笑ってしまうし、そこかしこのセリフも楽しいし、本当に嫌な人が出てこないところなんかヴェンダースの人柄という感じだし、あの高層ビルの街の画とか、何もない砂漠のアメリカとか、ドライブのところとか、昔ほど肩肘張っていないけど、やっぱりさらっと良い。見て損したとは思わないし、今のヴェンダースに対する期待度に対して不満はないんだけど、こんな評論家みたいな感想書きたくないんだよなあ。

 それもそうと、ちゃんと早起きして中川信夫の「地獄」見たかった…。