考える脳 考えるコンピューター: ジェフ・ホーキンス

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  • 人工知能ニューラルネットワークの限界を論じるところから始まり、人間の脳の機能を新皮質を中心に論じ、さらに今後の展望や工学への応用可能性を論じる。第6章の新皮質の6層構造のところが核心なのだが、脳科学の素人としては、結構大変。でも、決して難解な書き方はしていないし、難しければ6章をとばして読めばいいので、万人が読める/読む価値あり。
  • そもそも、PDAの生みの親といわれる人が、その成功の影にこんな野心の火を絶やすことなく燃やし続け、功成り名をなしたところで、自分で脳神経の研究をするための研究所を作ってしまうというのが、まず、いい話だ。
  • 彼の主張の中心は、従来の行動中心、入力中心の一方通行の脳理論に対して、予測による上位から下位への情報の流れを提案することで、脳活動の自立性を論理的に提案できるようになるということだ。脳科学を進歩させるためには、トップダウンアーキテクチャーが必要だ、と言うのが、彼の戦略。これは、なかなか素人目には説得力があると思う。この手の本はえてして、誇大妄想的になるか、何も中身がないか、どちらかになりがちなのだが、これは工学的で現実的な視点も当然きちんとあるし、読んでいて昂奮させられる。その上、たとえ話が何ともユーモアたっぷりでうまいので、あちこちで、げらげら笑いながら読んでしまった。
  • でも、本当に脳型コンピューターが実現されるとしたら、それは半導体だろうか?7章でも論じられているように、脳の部品とコンピューターの部品はスピードもメモリーも違いすぎる。新しいデバイスが現れるか、もしくは半導体ベースでの革新的なアーキテクチャーを考える方が、今のところ短期的にはまだまだ有望なようにも思える。
  • 彼の言う通りに、新皮質が本当に人間の知性の主要部分なのだろうか?他の脳の部分の役割も当然重要なのだろうが、彼の主張するように、実用的に知的な機械を作るなら新皮質を理解できればよい、というのはどこまで正しいのだろう?
  • 音声認識も最近は結構良いレベルまで来ていると言う声もあるが、実際のところどうなのだろう?CEATECでも日立がでもしていたのは結構なレベルだったような印象があるが、実力はまだまだなのだろうか?サムソンも音声認識機能付きの携帯電話出したみたいだし。