「鉄道ひとつばなし」 原武史

鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

  • なかなか面白かった。これだけキャパシティーの広いマニアというのも珍しいのではないか?ローカル線あり、地下鉄あり、韓国の話あり、と、鉄道とは言ってもずいぶん範囲が広い。何となく、マニアというのは、機関車専門とか、無人駅に萌え〜(そんな奴いるのか?)、みたいな専門店嗜好のイメージがあったのだが、これは鉄道という切り口で見た比較文化論であり、近代日本論であり、文学史でもある。短い文章の集大成なので、どこが面白いとあげるのは難しいのだが、天皇と鉄道の辺りは特に面白かった。歴史や政治など、あらゆる対象が、鉄道という一つの視点からの照射により現す意外な姿のおもしろさ。その切り口が偏向した一面だけを浮かび上がらせるのではなくて、本質的な問題がむしろまざまざと見えてくるような鮮やかさがある。