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「狩人の夜」THE NIGHT OF THE HUNTER 1955 米 93分
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2004/01/24
- メディア: DVD
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- 監督: チャールズ・ロートン
- 製作: ポール・グレゴリー
- 原作: デイヴィス・グラブ
- 脚本: ジェームズ・アギー
- 主演: ロバート・ミッチャム、リリアン・ギッシュ、シェリー・ウィンタース
- 助演: イヴリン・ヴァーデン、ピーター・グレイヴス、ジェームズ・グリーソン、ビリー・チャピン、サリー・ジェーン・ブルース
- 久しぶりに見たけど、やはり見始めるとどっぷりと引き込まれてしまった。こんな映画を作るチャールズ・ロートンは監督として天才だと思うけど、天才を潰すことでハリウッドのシステムは産業として機能していたのも一面の事実。オーソン・ウエルズ、サミュエル・フラー然り。と名前を挙げたのも、DVDの解説によれば、この映画の撮影のスタンリー・コルテス、”偉大なるアンバーソン家の人々”、”ショック集団”、”裸のキッス”の撮影でもあるそうな。このキャリアって、すごくない?いわゆる”呪われた映画”そのものの歴史だよ。
- 冒頭の偽伝道師の独白から始まるところも、もうここから異常な世界。父親が兄妹の目の前で地面に組み伏せられて逮捕されるところも残酷。刑務所の中で、寝言を相手に金のありかを聞きだそうとする偽伝道師。2階ベッドから逆さまに顔を出すのが、蝙蝠みたいで悪魔らしい不気味さ。刑務所を出た偽伝道師が最初にやってきた夜、兄妹の寝室に大写しになる影法師のシーン。あまりに有名な右手に”LOVE”、左手に”HATE”の、いかがわしい説法。それを素直に聞いてしまうアメリカ南部の素朴な人たちの顔、顔、顔。川沿いの小屋の人のよい爺さん。水中に母親の死体を見つけても、知らせると俺が疑われる、と思い込んでしまう。あの水中の母親の死体のシーンも不気味なんだけど、あまりに美しい。地下室のシーンも怖い。危機一髪の舟での脱出。川を流されるままに逃げていくところの、兎や蛙を前面に配したショットは、完全。リリアン・ギッシュに救われるところからは、もう彼女が出てくるだけで感動。
- なぜ、ここに、この映画にリリアン・ギッシュが出てくるのか?そんなことがあっていいのか?悪魔に追われて、last minutes rescueで逃げ出してくる兄妹は、まさしくサイレント映画期の彼女の役どころなのだが、その兄妹を守るためにライフルを持ってリリアン・ギッシュが立ち塞がるなんて、誰が想像できただろうか?そんなことはありえないはずで、そんなことを本当にして、呪われなかったら不思議かもしれない。ロバート・ミッチャムの偽伝道師もこれは完全な悪魔そのものなので、これを成敗するにはリリアン・ギッシュという大天使を持ってするしかない、のだが、そんな恐ろしい戦いがアメリカ南部のおおらかな自然を背景に展開するというこの奇怪さ。ありえないものを作ってしまう、というのは、天才の定義そのもので、この映画は天才の映画だとしかいいようがない。ありえないものをつくれば、それは呪われる。