「坂道のアポロン(3)」: 小玉 ユキ

坂道のアポロン (3) (フラワーコミックス)

坂道のアポロン (3) (フラワーコミックス)

 やっぱり、これは良いです。
 少年〜青年マンガには青春の情熱は描けても、青春の微妙な心理の機微は描けない。それが、良くも悪くもオトコ漫画というフォーマット。そこで微妙な心理を描こうとすると、やたらと無理矢理に痛い話になってしまうのは何故なのだろう?新井英樹とか花沢健吾とか。そんな微妙な心理の機微を男が持つなんてことはあってはいけないので、その代償を支払わなければいけないのだ、ということなのだろうか。その代償を支払わなければ、そのマンガはオトコ漫画雑誌の誌面を飾る資格がないのだ、とでも言わんばかりだ。
 これは少女マンガであることで、そういう呪縛から解き放たれているのが、男から見ても良いんだよな。千太郎の良い意味でのバンカラ、律子の古典感、薫のこざかしさ。多分、この話の登場人物の中で、今共感が持てる人物って薫しかいない。ひねくれた人間って、彼だけだから。彼が主人公で、彼の視点で書かれているから、この話成り立っているね。
 ホントにこれはうまい。「坂道のアポロン」というタイトルからして、三島由紀夫っぽくない?
 まあ、そう考えると、こういうのを見ると、ロックの世界でデヴィッド・ボウイが開いたものって、とてつもなく大きかったんだなあ、と思う。多分、彼自身は自身の生来的な志向としてバイ・セクシュアルであった訳ではなく、「男」であることの抑圧に対する反抗だったんだろうな、と思う。