本物の偽物

http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20090106d

明治から戦前にかけて、石器づくり名人として考古学の世界で知られていた、通称「五城目の中村老人」の手に成る作品が大仙市で見つかり、県埋蔵文化財センター(大仙市払田)で開催中の企画展「秋田の狩猟文化」の武藤鉄城コーナーで公開されている。

 偽造には、常に心惹かれる。所詮、後生に発見された「本物」は、当事者の証言を得られる訳ではないのだから、いかがわしさを免れない。そんな「本物」をせせら笑い、「本物」はこうすれば作れるのだろう?これが「本物」のレシピだね?という痛烈な皮肉を、その完成度で誇示してみせる偽作者のニヒリズムは、それがどうあがいても偽造でしかないといういかがわしい出自と偽作を名乗るに足るという自負を作品自体で誇示してみせる。その技量と心意気。この二つが言葉を介せず、むき出しで見るものに問いかける。そんな偽物に応えてみせるだけの度量を持っているという自負は私にはない。ただ、その「本物」の気概に圧倒される。埃の積み重なった系譜を踏み越えて、作者の技量という平面において時を超えた勝負を孤独に挑む戯作者の心意気。その心意気や覚悟を見過ごすことは出来ない。