「坂道のアポロン」 (1)、(2): 小玉 ユキ
- 作者: 小玉ユキ
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坂道のアポロン - Wikipedia
1966年初夏、船乗りの父親の仕事の都合で、横須賀から長崎県の田舎町へ転校してきた一人のナイーブな少年・薫。転校初日、バンカラな男・千太郎との出会いのおかげで、薫の高校生活は思わぬ方向へ変化していく。更に、薫は千太郎の幼なじみ・律子に、律子は千太郎に、千太郎は上級生の百合香にと、それぞれの恋の行方も複雑になっていく。
この千太郎がドラムを叩いて、薫がピアノを弾いてジャズを始めるんだけど、1966年というと、リアルには日活映画で石原裕次郎の世界なんだけど、なんだか、フランス映画、ヌーベルバーグみたいな感じです。ちょっと、マルグリット・デュラスみたいです(日本的に卑俗化すれば、あれは、転校生ものみたいな所あるよな)。あの頃のフランス映画を今見て、おしゃれだな、絶対真似できないな、というのは、みずみずしさだけじゃなくて、体臭みたいなものとか生々しさみたいなものが嫌でも伝わってくるようなところだ。それが若さということなのだろうし、勿論、今あの時代に設定して書いているから、こういう風に描けるんだろうけど、そういう切なさが、このマンガにはある。
この地方(九州)という設定がすごく良い。人間関係の濃密さみたいなものが、なんかリアル。東京とか都会だと、人はうじゃうじゃいるから、嫌な奴とはつきあわなければいいし、避ければいい。でも、地方都市の高校というサイズの世界の濃密さみたいなものが、全然違うタイプの人と人の出会いみたいなものの背景になっているような気がする。幼なじみ的な世界。全然違うタイプの人間と否応なしにぶつかり合ってしまう時期。大人になればなるほど、年をとればとるほど、身の回りが均一化されていきます。異物は取り除かれ、削られていきます。
「このマンガがすごい2009」は、選んでいる人たちがけっこうマニアックだし、まあ、あまりにサブカル色が強くて、なんだよなあ、と言いつつも、こういうのを2巻まで出たところでオンナ編1位に選ぶんだから、やっぱり偉いな、と素直に思ったな。