The Who @さいたまスーパーアリーナ


 オリジナルのメンバーは2人になってしまった今のThe Whoというのは、PeteとRogerによるTh WhoへのTributeみたいなものかもなあ、という意地悪い言い方だってできるのだろうけど、今は2008年だ。もう、20世紀じゃない。これ以上の何を求めるのか?素晴らしいライブだった。まるで、怪物のような最新のエンジンを搭載したクラシック・カーのようだった。ザック、最高だよ。
 大体、こんなおっさんばかりのライブで(とは言っても、クラプトンのコンサートに比べれば平均で15歳は若いだろうけど)、こんなに観客が歌う日本の洋楽ライブないだろう。そりゃ、イギリスなら地下鉄の中から大合唱かもしれないけど、これだけ観客のレスポンスがコアに熱い洋楽のライブは日本じゃそうそうない。観客のレスポンスが、「お〜、みんな、分かってるじゃん!」という感じなのだ。それは、ピートも、ロジャーも、観客全員が感じたと思う。ついに、我々はこの極東の小島で一カ所に集結したのだ!みたいな手応えがあった。ホントに熱くなったよ。叫んでしまったよ。Won't Get Fooled Again!今回の日本ツアーの中では、日曜と言うことで一番オッサンが集いやすい日だったのかもしれない。行っていないのにこういうのも何だが、金曜の横浜よりも、多分、観客の思い入れの全総計値は高かったんじゃないだろうか。
 その辺は、ピートも感じ取ったのか、オヤジギャグも"Hello, Osaka! Hello, New York! Hello, Chicago!"とやりすぎで滑り気味だった(苦笑)。誰か周りの人が、「あれ、受けてます」とか、よけいなこと吹き込んだんだろうな(笑)。サマソニで「Hello, FUJI ROCK!」と言ったとか、地名を間違えたとか、そういうネタって、山のようにあって、もはや、地名を間違えるのは定番の洋楽お笑いネタになっていると思うのだが、それを意識的にネタとしてやってみせたのも珍しい。もはや死語という感のある「外タレ」という言葉が頭をよぎる。そういうネタにピートが乗ってみせたというのは、やはり、今更ながらの初の単独来日公演にかける意気込み、ファンサービスなんだろうな(今、こういうところでサービスしてどうするんだ?と思った奴、死刑確定な)。
 セットリストは殆ど変化なし。今日は"Anyway"だった。これや"I can't explain"のあたりは、ほんとビートルズみたいにポップだなあ。そこから「無情の世界」のような後期のスケールの大きな曲まで、彼らのキャリアのすべてが網羅されたセットリストだった。
 今日はやらなかったけど、"The Kids are Alright"とか、初期の曲って、ジョン・レノンが歌ってもそのまましっくりくると思う。あんまり意識したことないけど。リンゴの息子がドラム叩いているから、そんな気がしたのかもしれないけど。初期のビートルズの"Hard Days Night"なんかの雰囲気とすごく近いよなあ。つまり、イギリス的と言うことなんだろうけど。その初期から、"Tommy"や"Quadrophenia"のロックオペラを経て、"Who's Next"、"Who are You?"といった、プログレ真っ青のスケール感のある壮大でパワフルなサウンドを作り上げていったところは、やはり、ジョン・エントウイッスルの存在が大きかったんだな。この辺の曲は、聞いていたときは何の文句もなく盛り上がっていたが、ジョンがいたらどういうことになっていたのだろう?と、今になってみると改めて思う。
 オリジナルのメンバーがいれば、The Whoは4人なのだ。4人のサウンドなのだ。それを今はサポートメンバー含めて6人がかりでやっとこさ鳴らしているのだ。長島と王が引退したから12人でやるとか、中田英が引退したから15人にしますとか、そういうことやっているようなもんだ。でも、いくら頭数を増やしても本質的な喪失は埋められやしないし、元通りにはならない。とは言っても、その増員前の音を知っている訳じゃないからねえ。そこが今回の初の単独来日に対する昔からのファンの拗ね処なのだと思う。"Live at Leeds"とは言わないけどさ、でもさ、という口惜しさ。
 されど、ザック・スターキーはスポットライトの当たり方も別格で、カウントする曲もあったし、メンバー紹介も他のメンバーのような紹介もなく、ただの「ザック・スターキー」だった。でも、観客の反応が一桁違う。観客も、みんな分かっている。オアシスを首にしてくれてありがとう、リアム。ダブルのバスドラのドラムセットを巨大蛸のように叩きまくる姿は圧巻だった。キース・ムーンも、このリンゴ・スターの息子にドラムをプレゼントしたときには、この坊やが自分の代わりにThe Whoでドラムを叩く日が来るなんて想像もしなかっただろうなあ。そういう話、すべて抜きにして、彼のプレイは本当にすごかった。
 ロジャー・ダルトリーは、本当に声が出ていて驚いた。60越えてるとは思えない。見た目は加藤茶になっても、中身はまだまだいける(^o^;)。近頃こういうパワフルな声のボーカルをあまり見かけなくなったような気がするけど、やっぱり最高のシンガーだと思う。
 声と言えば、ピート・タウンジェントも良く出ていた。彼の歌というのも、やはり重要なThe Whoの要素の一つなんだなあ、と改めてライブを見て思った。トレードマークの腕グルグルの風車奏法も、十八番のネタとはわかっていても、生で見るとやっぱりヤられる。あのスリムな長身であれをやると、確かにかっこいいのだ。
それにしても、オヤジ率もともかく、野郎率が高かった。8割5分くらい行っているんじゃないだろうか。結局、これが決定的にThe Whoが日本で人気を得なかった理由なのかもしれない・・・。"The Who"が好きな女の子って、ちょっとかっこいい、と思うけどね。


 もう"Street Fighting Man"を歌わないのがミック・ジャガーの良識なら、未だに"My Generation"を演るのがピート・タウンジェントの仁義なのだと思う。

The set list:

Can't Explain
The Seeker
Anyway Anyhow Anywhere
Fragments
Who Are You
Behind Blue Eyes
Relay
Sister Disco
Baba O'Reily
Eminence Front
5:15
Love Reign O'er Me
My Generation
Won't Get Fooled Again

Encore:

Pinball Wizard
Amazing Journey
Sparks
See Mee Feel Me
Tea and Theatre

The Who - Official Site of The Who, Pete Townshend and Roger Daltrey.