「フランス映画の秘宝」を振り返ってみる

 フランス映画とは何を指すのか?なんていう話は手に余ることは確かなのだけれど、確かにフランス映画というのはカテゴリーとして存在するのだなあ、と思った。それは、フランス人が撮ったから、フランスで制作されたから、ということじゃなくて、世界観、映画観みたいなものだ。アメリカ映画とは違う映画といっても良い。
 人間中心主義というか、ユマニズムというか、人間ありき、役者ありきの映画ということだ。見終わって、ストーリーよりも役者の方が強く印象に残るような映画、ということだ。役者や演技が脚本を支配しているような映画ということだ。あくまで優先順位の話で、すべてのフランス映画がそうだというわけでは毛頭ないけれど。マキノ雅弘が言うところの「一、スジ(シナリオ)、二、ヌケ(映像)、三、ドウサ(演技)」というのが、正にアメリカ映画の基本だ。でも、ジャン・ルノワールの自伝で父親のオーギュスト・ルノワールに「同じ葉っぱなんて一つもないんだ、それを見て描くんだよ」と教わる話が出てくるけど、フランス映画というのも、正にそれで、フランス映画って「一、ドウサ(演技)、二、ヌケ(映像)、三、スジ(シナリオ)」くらいなんではないだろうか。